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この経験で決めつける気はありませんが

同じことを繰り返していると習慣になる(と呼ぶ、というべきか)。それが文化に格上げされたりもする。長年続けた職業に必要なスキルが習慣になるということは、当然考えられる。また、そうでないと仕事を継続できない、という面はあるだろう。身近でも、新聞記者とか教員とか保険の営業とか、なんとなくそれっぽく見える。初めての人だと、心の中で職業当てクイズをやってしまう。記者の方々は相手の目を見て理解に努めようとする傾向があり、質問をためらわない。教師はあまりオープンではなくて、ベテランになるほど一方的に話す傾向があって、子持ちの女性に対しては生徒のお母さんという目で見がち。営業職の方々は、まず身なりがきちんとしていて、サービス精神あり。なあんて、勝手に決めつけちゃいけません、と自戒しつつ人と接しているわけだが、むしろあっちからステレオタイプさんが駆けつけてくるような場面もあって、飛んで火に入る夏の虫、というか、あまりにできすぎだと逃げたくなってしまう。そういう経験を昨日した。

それは元英語教師という方のお宅にうかがった時のこと。私の役割は、タイから来た高校留学生のホームステイ先に同行して、コミュニケーションで困ったらお手伝いする、というもの。ホームステイを受け入れるだけあって親切そうで世話好きそうな方だった。観光地に連れて行きたい、特に温泉は日本文化であると言う。ドキッ。一般的タイ人にとっての温泉はアツイ、人前で裸なんてとんでもない、というもの。かといって慣れて好きになる人も多いし、連れて行くこと自体はいいと思うけど、私が驚愕したのは、あれしたい、これしたい、と長時間話し続ける間、ただの1度も当事者の意向を尋ねなかったこと。温泉の効能書きを渡して「これを訳してメモさせてくれ、覚えるように」。温泉を愛すのも自由、どこに連れて行きたいのも自由。でも「タイに温泉はあるの」「行ったことがあるか」「感想は」とか、なんで聞かないのだろう。英語教師であるから「言葉の専門家」だとご自分を位置づけていらしたが、ここまで一方的な言葉って、一歩間違うとミサイルにも匹敵するように感じてしまう。かなり怖く、また悲しい経験だった。
by kienlen | 2006-08-20 13:00 | 言葉 | Comments(0)

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