日本仏教の特異性が分かる本

今枝由郎『ブータン仏教から見た日本仏教』を読んだ。「日本仏教は果たして仏教と言えるのか?」を、長年フランスとブータンで研究生活をしてきた著者が、いわば外部の視点から問うもの。ひじょうに面白かった。やっと探していた本にめぐり合ったという感じ。昔、まだ悩める若者だった頃、やみくもに仏教関係の本をいくつか読んだ。すごく感動して母親に勧めたことをなぜか覚えている。かといってタイ人に「仏教徒か?」と聞かれて自信をもって「ハイ」と答えられない自分だった。多分、典型的な日本人だろう。タイにいると仏教があまりに身近である。お坊さんは一目瞭然の姿でたくさんいるし、勤務先の同僚がしばらくいなくなったと思ったら、眉毛と頭髪のない姿で復職してきたり(短期間の出家)、寺に寄進するからと封筒が回ってきたり(共同寄付)、物乞いにお金を恵むのもタムブン(喜捨)、泥棒に入られたらこれもタムブンってことになったり、朝の托鉢はもちろん、僧侶に相談事をし、結婚式も新築も、何かにつけて僧侶を呼んでタムブンする。とにかく日常生活が目に見えて仏教的である。

すると、日本の仏教って何だ、と感じる。それで日本に戻った時に実家の菩提寺の住職に、この違いは何ですか、と教えを乞うたのだが、彼にはお酒の方が興味あるようだった。タイの仏教については石井米雄とか青木保らによる詳しい一般向けの報告や考察がある。でも比較的見地からで、教えだけではなくて、身近な習慣の違いも解説してくれるものはないかとずっと思っていた。例えばお墓。この本によると、これは日本仏教特有なものだそうだ。タイに墓がないのは、本来の仏教としては当然なのだ。南伝のタイ、スリランカ、ミャンマーなど上座部仏教と、著者の専門であるチベット仏教の違い、それから同じ大乗仏教とはいえ日本仏教の特異性と問題点等、仏教史の視点から幅広く、でもひじょうに分かりやすく解いてある。仏教を国教にしているブータンが「国民総生産」より「国民総幸福」を指標にしていること、など興味深い知見にあふれた本だった。写真はタイの地方都市の朝の托鉢の様子。
f0104169_1561537.jpg

by kienlen | 2006-07-30 15:09 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31