虐待する母のルポルタージュ

保坂渉『虐待-沈黙を破った母親たち-』を読んだ。昨日買ってすぐに読み始めたもの。この手の本は今までにもかなり読んでいる。斎藤学、信田さよ子等、そしてさまざまなルポルタージュ。それに、子供の虐待を考える会の会員にもなったし、関連の講演も何度か聴いたし、無力な子供が被害者になることに憤りを覚えるし涙がでる。しかし、親が加害者という立場だけでみられることにも抵抗はある。それは、自分自身、ちょっとタイミングがずれていたら加害者になっていたかもしれないと、心底思うからだ。日本で出産していたら…、自分と同年代の日本人男性と子育てするハメになっていたら…、高齢出産でなくて若かったら…、あの母親の近くにいたら…、想像するだけでも恐ろしい。障子紙1枚で、たまたま隔てられているだけのこと、という気がする。実際「あなたのような母親だと息子に刺される」と、まじめに言われたこともある。それは覚悟しなければと、いつも思っている。

今回読んだのは、岩波現代文庫版で発行が2005年、オリジナルから6年経ているということなので、元は1999年らしい。ということは、取材はさらに遡った時期ということになる。この辺りから今に至るまでは、この分野への世間の関心が高まり、児童虐待や家庭内暴力関連の法律ができたり、大きな変化があった時期だ。それを踏まえておかないと、古びた印象を帯びることになってしまう。子供を虐待した4人の母親からの聞き取りで構成されている。共通しているのは、彼女達のいずれもが、表面的にはともかく、受容的でない家庭環境の中で育ったということ。端的に言うと、そして本書によると愛情不足。すると、愛情確認が常に必要になるので、夫や子供がその対象になった場合は悲惨なことになる。4人の内の1人は子供を殺害している。ただ、愛情不足の枠だけで書かれたら辟易なのだが、本書は、夫の態度にも触れているし、全体的に冷静で好感をもった。規範意識が強い国で、母親が密室育児をする怖さをつくずく感じる。
by kienlen | 2006-07-22 01:01 | 読み物類 | Comments(0)

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