『室町記』
2017年 11月 13日
日本にいたら年末の雰囲気が漂い始めるころかと思うが、こちらにいると、多少は涼しくなって日も短くなっているとはいえ、かといって日本のあの雰囲気とは違い、まさに気づいたらあっという間に11月も半ばになっている、という、まるでそのまんま。この本を読んだのもしばらく前のことだ。すっかり影響されて何冊もここから読んでいる丸谷才一の読書案内本で絶賛されていたので、やはり読んでみたくなって持参していたもの。絶版のため古本にて購入。これもアタリだった。すごい面白かった。室町時代というのはあまり注目されない時代なのだそうだ。しかし、この時代こそ、お茶やらお花やら現在日本文化の代表とされている文化が花開いた時期なのだそうで、そのことについて細かく記している。で、その記し方にもう大興奮。
天下を統一するような強い統治者のいない時代、何というか主人公のいない時代という感じの中で、本格的な都市文化が栄え、地方文化も生まれたのだが、ここで面白いと思ったのは、イタリアのルネッサンスと違い、日本の地方文化があくまで中央志向だったという指摘。確かに今にも通じるなという気がした。お茶もお花も、もてなしの文化として花開いたことが何を意味するのかとか、連歌が極端に形式主義になっていく過程とか、わくわくしっぱなしだったが、能の確立については、日本の芸術が一般民衆の反応を無視しない形であったのが特徴だと西洋との比較で述べているのもひじょうに興味深かった。人間関係の機微とか、もうもう、内容濃過ぎて消化しきれないが、全体に、俯瞰的な視点と巨視的な視点とが納得できるバランスで配置されていて大変満足な一冊だった。読み直すべき積読本に加えておくのがいいかもしれない。
by kienlen
| 2017-11-13 07:08
| 読み物類
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