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バンコクで漱石

昨日は珍しくいい日だった。平日なのに職場に行かなかったから、というのが一番の要因かもと思うと、いかに職場が合わないかということだ、なんと情けないことか。仕事をさぼったわけではなくて、ちょうど入管に行かねばならない日で、そして仕事がない日だったし、残業やら休日出勤もしているのでその代わりに夏目漱石についての講演があるから行かせて下さいとお願いして、問題なくはいどうぞ、となったもの。バンコクの真ん中にある有名大学が会場で、ここに、友人の友人という人も行くので落ち合おうってことになっていた。その前に写真を送ったりして、まるでお見合いみたいね、ということになっていて、しかしおかげですぐに初対面の人を判別することができた。で、それがまたとっても素敵な人たちで、初対面なのに、いきなり親しみを覚えてしまった。こういうタイ人を見ると、ああ、いいなあと思う。

そして東京外大の先生による漱石の話しは面白かった。聴講者は日本語を専攻している学部生やら院生やらが中心で、日本人らしき人はちょっと見当たらなかった。タイ語の通訳が入るので時間がかかるし、こういう場合中身が薄くなりがちなのを心配したけど、内容は一般的で自分にはちょうどよく、漱石への愛がいっぱいで熱心で、特に時代背景との関係で読み解くという感じで、どの作品もその時代の比喩になっているという見方で筋を通していた。へえと思ったりえっと思ったり。という話しの前には、漱石の文学観みたいなのを結構詳しく説明してくれた。例えば日本人に英文学が分かるのかという問に、彼自身が葛藤して、日本人だろうが英国人だろうが個人差があり、その差というのは日本人と英国人の差と同じようなものだという結論に達したと。そういう話しを聞きながら、間主観性という言葉が浮かんできた。この大学では院生は漱石を読むのだそうだ。しかし、漱石を読んだことがある人、という講演者の冒頭での問いかけに手を上げたのはほんの少しだった。タイで漱石が人気、という話しは聞いたことがない。

by kienlen | 2017-11-07 23:27 | その他雑感 | Comments(0)

信州で読んだり書いたりタイに住んだり戻ったり旅したり


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