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『わたしを離さないで』

カズオ・イシグロのノーベル文学賞の知らせは、まず友人から入り、続いて娘からもあった。『日の名残り』の感動がよみがえった。で、この著者の本を何か読みたくなり、Amazonチェックしたらこれが良さげで、電子書籍にもなっているので買おうかとクリック寸前に娘から、旅先の書店にあったから買う、私も読みたいから、という連絡が入り持参するよう頼んだ。そして娘がまずタイ旅行中に読み終え、私に渡すということになり、がんばって読んでいた。そして次に私が読んだ。これも多分忘れられない小説になる。映画化もドラマ化もされていることを初めて知ったが、活字で読むのはまた全然違う味わいがあると感じる。

最初はとっつきやすくて、次に少し疲れてきて、それからああ素晴らしいとなって、あとはもう一気に最後までいくという感じだった。昨日はそれで、ベッドに寝転がってずっと読んでいた。種と仕掛けがいっぱいの内容なので、主人公が誰と明かしたら色々ばれてしまうが、かといって謎を解くというものでもないので隠しておかないといけない、というのでもなさそう。介護人とか提供者という言葉は最初のページから出てきて、あれかと想像させるものはあるのだが、かといってまだ物語とこちら側との間にはベールがあるみたいな雰囲気。そのまま微細な描写が続いて、ここは小説ならではの楽しみ。この感じ、そうそう分かる、という。映像だったら目線とかちょっとした仕草から読み取る部分なのだろうけど。過去と現在を行き来しながら、でも筋が分かりにくということはなくて、生と死とか愛とか、つまりまあ普遍的な世界に労なく連れて行ってもらえる。孤独と感動で泣いてしまう大人の小説。いやはや良かった。娘がこの人の別のも買うといっているので歓迎。

by kienlen | 2017-10-17 09:21 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたりタイに住んだり戻ったり旅したり


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