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『日本断層論―社会の矛盾を生きるために』

中島岳志が好きだと言いふらしていたら、これ好きかも、2時間で読めるから読んで、と友人が貸してくれた。もう読んでいる時間ないから謝って返却しようと思って一応ちょっと開いてみたらなんと面白そうで結局今日はこれを読むのに2時間ではおさまらずもっとかけて読み終えた。1927年生まれの森崎和江に1975年生まれの中島岳志が話を聞くスタイル。戦中から戦後にかけてのある部分の状況が森崎和江の生い立ちを聞くことでみえてきて、その後の活動を聞くことである部分の戦後史がみえてきて、森崎和江という人のこともみえてきて、傾倒している友人はいたが自分は読んだことのない谷川雁のこともちょっとみえてきて、その他当時の知識人のことも身近に感じられる本。竹内好もかなり登場。対話と解説のバランスもほど良くてぐいぐい押されるように読める内容だった。大変読みやすく、でも中身は濃い。

近々返却する人の本に付箋をつけてもしょうがないのに、どうしてもで一か所だけ貼ったところがある。〝その後の森崎さんは『からゆきさん』など民俗学的、ドキュメンタリー的な作風に向かう。運動を通して新しい共同体をつくるというよりは、「私」と日本をより深く探すことになる。他方で、その後の日本の運動は、70年ごろの森崎さん的な問題意識を十全には引き継げなかった例も多く、以前からの運動の負の側面、つまり集団系世知を閉鎖的なものとして捉え、仲間内で凝集し、内ゲバや統制ばかり幅をきかす流れが強くなった。それが、広い意味での日本の民衆運動の、いまも残る弱点をつくってしまったと言えよう〟。良い本を紹介していただいた。

by kienlen | 2017-05-06 21:35 | 読み物類 | Comments(0)

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