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『精神鑑定の事件史―犯罪は何を語るか』

雨模様で、暖房を入れない家には寒い。風呂に入ってソファに寝転がって読んでいたがちょっと寒くて起き上がって読み続けた。東京の古本屋街をぶらぶらしていた時、安く売っていたので買った。別の本を読みかけて難しくてこっちにちょっと目を通したら面白くて最後まで。犯罪が起きると必ずのように精神鑑定が話題になり、またそういう関連の本が出たりもするが、これは最近の事件を扱ったり、ひとつの特異な事件について詳述するのでも、それに著者が鑑定したものを述べているのでもない。発行が1997年と、古いといえば古いが、取り上げている事件そのものはもっともっと古いし精神鑑定の歴史にも触れていて基本的なことが分かって面白かった。それと、元々単純なものとは思っていないが、それにもまして精神って実に複雑なのであるというのも分かった。

5章立てで、主にひとつの事件を取り上げながら関連を掘り下げている。まずレーガン大統領暗殺未遂事件。3章のロシア皇太子暗殺未遂の大津事件については明治の精神というか、そういう視点からの分析がひじょうに興味深かった。最後が「哲学者アルチュセールはなぜ妻を殺したか」。哲学者アルチュセールの名前だけは知っていたが読んだこともなく妻を殺したことも知らなかった。これもひじょうに興味深い、まあ、どれもひじょうに興味深いのだが。で、この章に出てくるフーコーのピエール・リビエールの犯罪はあるのに読んでいないのですぐにも読みたいが、そんなことしている余裕があるのだろうか、と、問う相手もいないのだが。面白い本だった。本との出会いもご縁だが、今日は久々の友人から連絡があり、人のご縁の不思議さをまたまた感じた日だった。


by kienlen | 2017-05-01 15:50 | 読み物類 | Comments(0)

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