『日の名残り』

カズオ・イシグロの本、初めて読んだ。丸谷才一が絶賛していて俄然読みたくなって購入。朗読者を読んだ時、今まで読んだ中で一番感動したと思っていたが、それを塗り替えた感がある。いやあ、素晴らしかった。言葉になりません。主人公は貴族の執事という設定。文体は執事の話し言葉風なのでとってもお上品で、しかもいやらしい感じはなくて自然で、お館の執事ってこうなんだ、と、縁もゆかりもないのに分かったような気になってしまう。執事のプロ意識とは何でプロの仕事とはどうで、ということが言葉の端端に表れ、これがまた英国とは英国人気質とは、みたいなところも表していて、いろいろ充分堪能できる仕掛けとなっている。

しかも、構成はこの執事が休暇中にひとりで旅をするというものなので、イギリスの田舎の風景とか田舎の人とかも登場して、これがもうイギリスに行きたい気分にさせられてしまってたまらない。つまり旅をしながら高貴なお方に仕えてきた過去を回想するわけなのだが、回想している年は1956年で、回想されているのは1920年代から30年代、かな。つまり第二次大戦が迫っている時期まで。ドイツがイギリスにアプローチしていた様子なんかが秘密会議とかの様子で分かるようにもなっている。執事の視点なのでものすごく抑制が効いていて、というか、それが品格というものであるというのは結構くどく語られているのだけど、隅々まで巧妙な仕掛けがいっぱいで小説の楽しみ満喫。原文はどんななんだろうか、この前ロンドンに行く前に翻訳を読んでいたら原書を探したに違いない。残念だ。執事の現在の主人はアメリカ人になっているのだが、コーク家の方々もイギリスの建物を買いあさっていたので、それと重なりなるほど。ああ、素晴らしかった。深く感動。

Commented by jun at 2017-03-17 06:40 x
そんな執事に会ってみたいし、一緒に回想の旅にでも行ってみたいですね。また、懐古的ではありますが、立派な貴族ならいてもいいなかとも思います。現代の自由と民主的な社会は、大衆がそのような貴族的な精神を持たなければ、ポピュリズムの弊害に押されかねない気がします。もちろん揺り戻しがあるしょうが。執事とは、個人に仕える優能な官僚みたいな感じもします。高給でしょうが、コックさんと共に雇ってみたいです。でも、私がそれに相応しくなるのが先ですが。((^-^*))
お借りしたい本が多数なので、悪いので頼みません。
「電通、森永、咎なり。もう詰んで。」でんつうもりながとがなりもうつんで
最近の話題から、自作回文。
Commented by kienlen at 2017-03-17 07:18
junさん、そうそうそういうことも含んでいます。さすが。詰んでるのかなあ、こちらもさすが。
by kienlen | 2017-03-16 14:59 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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