『コーク一族』

結構な大著で時間がかかり、やっと読み終えた。コーク家というアメリカの大富豪について各々の人物像からドロドロの家族関係から企業経営から政治との関係から諸々を詳細に記したもので、書いているのは米国人ジャーナリスト。小説を読んでノンフィクションに移ると文章の平坦さに物足りなさを感じてしまうが、しばらくすると慣れた。とにかく私はコーク家など聞いたことがなく何も全く知らなかったが、これは相当に面白い内容だった。一日読んでいられるような時間があったら読みふけったに違いないと思う。主人公というか中心となる人物はコーク家の男ばかりの4兄弟である長男、次男、それから双子という構成。ただし石油で創業したのは4兄弟の父なのでそこから物語は始まっている。父がどのように息子たちを育てたかだ。アメリカ映画を見ていていつも父と息子の関係の重さを感じるが、ここでもそのイメージはそのままだった。妻は強い夫に従い、息子は強い父に従うというのが、日本のように形式じゃなくそのまんまなのがきっとアメリカ白人プロテスタントの家庭の掟なのでしょうか。

それでこのコーク兄弟のキャラクターというのが見事に描き分けられるものらしく、長男は事業には関心を持たずに母に似て芸術分野へ。次男が期待の星で跡継ぎとなる。頭も容姿も良くて事業の才能がありものすごい勢いで企業を大きくする。非上場企業で全米2番目とのこと。多分この2人だけだったら問題は起きなかったのだろうけど、物語としては面白いのは双子で、1人はイケメンで明るい人気者でデキル次男の家来みたいな感じ。でももう1人が悉く上2人に批判的というより喧嘩をふっかけてばかり。この喧嘩というのがハンパではなく、つまり裁判闘争をひっきりなしに行うのである。どっちも大金持ちなので金に糸目は付けず徹底的に執拗に。誰と誰がどうして組んでどうなる、みたいなダイナミズムも面白かったが、一番興味深かったのは社長である次男が徹底したリバタリアンであること。父が徹底的に反共になった過程も詳述されていてなるほどと思ったが、徹底したリバタリアンとなると共和党が大企業有利の政策を取るのも当然意に反するわけで、この内部というか民主党はあり得ないという点では一致する人々の中での分裂ぶりが面白い。おかげで、憎い、あり得ないオバマを落とせなかったわけで、その闘争もすごい。コーク側の視点に徹底してはいるがオバマ側の様子も想像できる書きっぷり。トランプが彼女連れで2行ばかり登場していた。大著で盛りだくさんで書ききれないが、なんか、アメリカという国の一部を大変よく理解できた気になってしまう本だった。面白かったあああ。それにしても本の時間がないこの頃。

by kienlen | 2017-03-15 18:01 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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