『謝秋娘よ、いつまでも』

うわあ、これすごい面白かった。『天国の風―アジア短篇ベスト・セレクション』というのに収められている一篇で独立した本ではないのだが、すごすぎてメモっておきたくなった。本の方は高樹のぶ子編ということで新潮社刊、というのが何だか意外だった。図書館でみつけて何となく借りて何となく読み始めたら面白くて読み通せそう。ベトナム、タイ、インド、台湾、モンゴル、インドネシアと読んできて、どれも個性的というかその国の風を感じる、まさにタイトル通りだったが、この中国の小説はまた一段と面白かった。ベトナムもインドもすごく良かったが、こちらはさらに、うなった。

主人公はものすごく魅力的な女性。周囲が年老いていくのに常に若く美しく、決して動じるということもない。レストランを経営していて、料理の腕前がまた素晴らしく、特別メニューとして出される料理の名前も説明もよく分からないが、活字を見ているだけで垂涎もの。言い寄る男は数限りなし。当然みんな金持ちで高い地位。それに対する主人公の態度が、もうオセロのようにひっくり返る歴史ある中国に対する感じのようで痛快というか悟りきっているというか。彼女がどうしてこうなったかというを感じさせる描写はあるが、結局最後まで謎めいたところは残したまま、しかし迫ってくるものあり。東洋の小説って西洋のような神がいない分、生の人間の息遣いも自然もそのままの感じがする。ああ、面白かった。短いのにこのインパクト、短篇小説って面白い。あと、フィリピン、韓国、マレーシアが残っている。

Commented by jun at 2017-02-28 06:58 x
「バベットの晩餐会」のバベットや、kienlenを連想しました。
それはさておき、それだけ面白いと言われたら読みます。
また、確かに何でも神に帰してしまうのも西欧と米国の悪癖かも。でも古今東西そして南北でも、その違いよりも共通点が多いこともまた。ちょうど週末に行われた入試の英文問題には、そんな問題のよい考察がありました。(今朝の朝刊に原文あり)
今日はまた二月の最期の日。少し認知が入ってきた隣家に住む母の誕生日です。
Commented by kienlen at 2017-02-28 07:35
junさん、お母さまのお誕生日おめでとうございます。ウチの父がこの間「忘れるってのは恐ろしいな」としみじみ言ってました。生まれて老いて死んでと、古今東西、人間の営みが変わっているわけじゃないですから、その本質に迫る小説は共通点の方が多いというのは確かに。興味あったらどうぞ。短篇なので時間かからないです。
by kienlen | 2017-02-27 14:31 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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