日本の外国人を考える講演会

手塚和彰さんの講演会に行った。この人の『外国人と法』という本は、一般向けに分かりやすくこの分野の解説をしているもので、私にとっては辞書のようなもの。付箋と下線だらけ。その人が来るというので、はるばるM市まで交通費をかけて行った。演題は「日本の外国人を考える-米国移民と中南米移民」。日本政府は人口過密の解消策として中南米移民を60年代70年代まで送り出してきたが、つい最近のドミニカ移民による訴訟でも話題になったように、ちゃんとした調査もなしに、いわば騙して送り出したことが明らかになっている。その後のバブル期に、このとんでもない国策移民の子孫である日系人を、事実上単純労働の担い手として受け入れる改正入管法の施行が90年。ここらへんの経緯や、日系人の間接雇用の労働事情、それ以前のバングラデッシュ人、パキスタン人、そしてイラン人という出稼ぎ労働者の実態等を交えて話は進んだ。フランスやドイツ、イギリスの外国人問題への言及もあり。

私としては一応かじっている分野なので、知識としては新しいものではないが、部分的には感覚的なものでしかなかった点も確認できたのが良かった。「責任の所在をはっきりさせないのが役人の第一条件」「姉妹都市提携で首長や議員が税金で行き来しているのに、隣に困った外国人がいても助けるか?」「移民、難民について今も国としての決断がない」等々、日ごろ自分が感じている疑問を、専門家が明快に指摘してくれた。最後は、共生社会とはいうけれどそう簡単ではないでしょう、という締めくくり。現場を見ている人は理想論で終わらせないことに好感をもったが、それは同時に今後困難な道が待っていることの確認でもあった。そして、今の社会状況が、大正デモクラシー期に闊達な議論があったのに、その後の暗黒時代へ突入した時と似ているという危機意識の表明。目を凝らして自分なりにできることをしていかなくてはいけない。講演はあまり期待しない方がいいと思っているが、今日のは充実した1時間半だった。
by kienlen | 2006-07-09 22:18 | タイ人・外国人 | Comments(0)

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