『自壊する帝国』を読んだ

佐藤優『自壊する帝国』をやっと読んだ。佐藤優は好きなので、迷うことなく買っておいたものだが、しばらく手付かずだった。昨日まで読んでいたのが仲正昌樹『分かりやすさの罠』という新書。新書なのに、私には難しすぎた。分かりやすさの罠に引っかかりたくないと思ってはいるけど、それをテーマにしたものがあまりにも理解できないと、それはそれで自分がみじめになる。意地になるような根性があるわけでもないのに、この著者は好きなので、意地を張って字面を追って最後までたどり着いたが、おかげでやたらに時間がかかり、全体的な満足感も得られず。続けて、この本にとりかかったら、これはさすがに面白くて、読みふけってしまった。中だるみ全くなしで、最後まで緊張感を維持でき、それも快い種類のもの。今日は特にすることもなかったので、友人とお茶に外出した以外は本書を離さず、夕食はいつにもまして簡単に済ませた。

帯には「どんなスパイ小説よりもスリリング」とあるが、大げさと思えない面白さ。昨年の『国家の罠』の国家は日本だと思われるが、今回、自壊する帝国はソ連。佐藤優が外交官としてモスクワに赴任している間に起こったソ連の崩壊までを、多方面の要人との交流を通じて、内側から描いたもの。私にとって興味深いのは、体制や理論よりは、思想や利害や戦略や虚偽、諸々が渦巻き、入り組んだ組織や人々の中で、情報収集及び分析活動する外交官が、行動の基準をどこにおいているのか、という点で、それがよく登場する表現「筋を通す」であるようだ。ロシアにおける人間関係で最も信頼されるのがこれということだが、だとしたら日本とは随分違うのだなって感じがする。それとも要人、エリート、インテリの間だけのことなのか。庶民は完全シャットアウトの世界なので、そのへんは分からないけど。政治の中枢という限られた場所における、最高にスリリングなノンフィクションだと思った。この情報量で1600円はお得感あり。
by kienlen | 2006-07-03 23:17 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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