『プリズン・ブック・クラブ―コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』

これは本好きにはたまらない本。カナダはトロントの刑務所で読書会を主宰する敬虔なクリスチャンのキャロルに誘われ、ジャーナリストである著者も読書会ボランティアを務めることにして行った1年間の記録。参加を決める前に著者の逡巡があるのだが、理由は、ロンドンで強盗に襲われた恐怖が、犯罪者に会うことでよみがえるのではないかという不安があったからで、もうひとつは、顔や名前を知られて自分にも家族にも何かあるのではとの心配。とまあ、そういうところからスタートする。著者とキャロル以外は仮名だが、起きたことやセリフは実話なのだそうだ。まず読書会の様子が一番多い。120冊くらいの本が登場して巻末にリストになっている。私が読んだのは、子どもの時に読んで内容を忘れているのも含めてなんとなんとたったの6冊であった。で、この読書会、進行はキャロルだったり他の人だったり、受刑者が行ったりと色々だが、1人の登場人物に対してそれこそさまざまな感想、意見が出てワクワクの面白さ。

もうひとつは、著者が受刑者にインタビューする場面。殺人、銀行強盗、薬物と犯罪の種類は色々だが、どうしてそういうことになったのかなどが会話主体で明らかになる。そしてもうひとつが刑務所内の様子と出来事。規則、仕事、人種構成、ストライキがあり、ケンカがあり、武器作りがあり、イジメがあり等々。400ページを超える長さで基本読書会の様子だが全く飽きないし、軽いタッチなのに涙がホロリという場面も。本の力を信じている人たちによる本の力の物語だ。もちろん万能であるわけはないが、ここまで真摯に本について語り合うということは、その人の生き方とか世界観とかが出るということで、それが感動的。受刑者だけに一筋縄の人生ではなく、個性的な感想も多々。どの人物も魅力的に描かれている。著者は外の世界の恵まれたマダムたちの読書会にも参加していて、対照的な人たちが手紙を交換したり、楽しいエピソードもある。小説よりもノンフィクションの方が人気とのことで、読んでみたいなと感じる本もたくさんあった。ネットで紹介されていたのを見て興味もち、この間のブックフェアで買ったもの。読書会やりたいという気持ち強まる。それにしても刑務所事情は日本とはだいぶ違うように感じられ、そのあたりも興味深かった。いやあ、良い本でありました。

by kienlen | 2016-10-20 20:03 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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