『「子供を殺してください」という親たち』

しばらく前、急遽夫から店番を頼まれた時、外出先にいて店番しながら読めそうな本を持っていなかったので図書館でこの本を借りた。出だしは少々くどく感じて止めようかとも思ったが、そこを過ぎたら納得できるくだりが多くなり、最終的には大変いい本だと感じた。というか、よくぞ言ってくれました、という感じ。つまり、マスコミ等ではなかなか報道しにくいことが書いてある。事件の背景に精神障害があった場合、それが原因であるとは言えないので触れないという選択は、多分なされているように思う。被害者であれ加害者であれ。さらに精神障害なのかどうかも微妙だし、さらにそれに育て方が関係しているのかどうかなんてさらにさらに微妙だろう。因果関係のはっきりしないものを短い時間で説明するのは、長い時間でも難しいんだからひじょうに難しいに違いない。

統合失調症の友人がいて、この病名に至るまでに色々な診断名が下っていたようだが、彼の説明によると医者の見立てとしては生得的なものだそうだ。へえ、そんなことまで分かるんですかと感じ入ったものだったが、そういう説明があるとすれば環境的なものもあるということになるのだろうか。などと回りくどくいわなくても虐待等々、環境要因が関係することはあるだろうし、かといってすべてなわけもないし、でも避けては通れないし、というモヤモヤ感にひとつのヒントを与えてくれるものだった。それと、長期入院させないという法改定により行き場のない人も出てくるとか、とことん悪くならないと福祉につながらないという日ごろ感じている疑問への答えというわけじゃないけど、なるほどという感じがあった。落とし穴のようなグレーゾーンの苦しさは充分に想像できる。建設的な提案もあり。精神障害者と医療をつなぐ移送サービスの会社を経営するという著者の経験に基づいた貴重な内容と思った。とても良かった。

by kienlen | 2016-09-28 22:58 | 読み物類 | Comments(0)

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