疑惑のチャンピオン

この映画、ポスターを見ただけで興味をもち、見たいと思いつつ時間なさそうで諦めかけたら、最終日にギリギリ駆けこむことができた。このところハズレなしで推移しているが、これもまた大変面白かった。この間のニュースの真相同様、事件に関係した人物による自伝、評伝を元に映画化したもので、この映画の場合、その原作者にあたるのが、事件を取材していて業界から追放みたいなことになる新聞記者。つまり事件の主人公は別にいて、ランス・アームスロトングという自転車競技のアメリカ人アスリート。こんなすごい人を知らなかったのはタイにいた期間だったせいだからなのか、興味がこういうことになかったせいなのか…。つまり私は事件の内容自体を全く知らずに見たということになる。出だしがツールドフランスの過酷な場面と観光プロモーションビデオのような美しい風景。ツールドフランスだって名前しか知らないものな。それで、ちょっと映画見ただけで知ったような気になる。最初の方は、勝つためにドーピングするという比較的シンプルな話に感じられ、これでどういう展開になるんだろうかと思っていたが、選手生活頂点でガンになり、それを奇跡的に克服し、となると、え、もしかして単純な感動物語かとますます分からなくなり、でも本格的に面白くなるのはその後からだった。つまり原作者でもある新聞記者が、このヒーローに疑問をもち、決定的な証拠がないままに、でも確信をもってドーピング疑惑をスクープするあたりから。

勝利への執着ってこういうことなのか、勝利者を中心とするのか実は脇役なのか分からないくらいな関係者の思惑になるほど分かる分かる、ヒーローがいるとその競技自体の人気が高まるので自転車競技の団体もヒーローでいて欲しいがための保身にまわる。臭いものには蓋をしていけるところまでいけって、ほとんどすべてのことに共通しているように感じている者としては、ものすごく分かりやすい構造をものすごく分かりやすく示してくれている。それにしても、アスリートというのは他と違って自分の肉体をストレートに改造するわけで、しかも明白な結果を出さないと意味ないわけで、心身ともに象徴的な意味でなく命がけなんてものじゃない気迫が、他の分野と違うので、当人にも同情したくなったりするのが政治家なんかとは根本的に違うところで、見ていて本気でハラハラする。ドーピングを隠すために行なう手段のすごさ。それを指南する医者は悪魔のようにも見えるが、当人とすれば科学的に勝つという使命感をもっているようでもあるし、第一望む人がいるわけだ。人間界の魑魅魍魎をとっても分かりやすく描いているし、サイコパスといってしまえばいえそうだけど、そういう風に片付けないストーリーで、世間をあっといわせたあの科学者の心理だってこういう感じで、それを支持する人の感じもまさにこうなんだろうなあとか色々考えさせられ、スポーツと映像の相性の良さもあるし、色々な意味でとっても面白かった。ギリギリ駆けこんで良かった。

Commented by jun at 2016-09-28 06:22 x
真相を追求しようとすると、何処からとなく「そこまでにしておけよ。」という圧力がかかる。お決まりの経験が私にもあります。先月の佐藤優さんの講演での私の質問で「それだけ言って、圧力はないですか?」という答えは「何をやっても圧力はあるでしょ。」という明快なものでした。でも氏は森喜朗さんを少し持ち上げるという「保険」をかけていました。また、すべてはお互いの為だという哲学と信念。
この映画は私も見たかったな。
「アスリート」という文字の中には「アート」があり、それを挟んで中には「スリ」が居ますね。アスリートではないけれど私も気を付けようっと。
「御世の機さ 天才三手 先の読み」近作回文川柳です。
みよのきさてんさいさんてさきのよみ
Commented by kienlen at 2016-09-28 22:02
> junさん
すごい回文川柳ありがとうございます。そうですね、この映画も見られたら面白かったと思います。
by kienlen | 2016-09-26 11:15 | 映画類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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