『愛国と信仰の構造―全体主義はよみがえるのか』

せっかく時間があるので今まで読めなかった本にかかっているのに、本屋に行ったり図書館に行ったりしている。これは本屋で見つけて好きな中島岳志さんの対談本で、相手が、タンマガーイ運動についての本でも言及されていた宗教学者の島薗進さんで、テーマがストレートに興味の的だったので買ったら娘とだぶってしまい、友だちに頼んで引き取ってもらった、ありがとうございます。で、今取りかかっている本より読みやすいのでこちらを先に。目次をみると流れが分かる。戦前ナリョナリズムはなぜ全体主義に向かったのか、親鸞主義者の愛国と言論弾圧、なぜ日蓮主義者が世界統一をめざしたのか、国家神道に呑み込まれた戦前の諸宗教、ユートピア主義がもたらす近代科学と社会の暴走、現代日本の政治空間と宗教ナショナリズム、愛国と信仰の暴走を回避するために、全体主義はよみがえるのか。

この章立てにピンときたら読んで裏切られることはないと思うしピンとこなくても読んでソンはない。大変大変良かった。新書で対談ではあるが、中身はとても濃くて、明治期からの日本独特のねじれを分かりやすく説明していてすごく刺激的だった。自分自身、何を拠り所にするかという時に、やはり宗教だよなと思い、その点自信をもって信仰できる対象があったら人生全然違うだろうと思っているので、ほとんどずっとうなずきながら読んだ。そういえばウディ・アレンの映画でも、キルケゴールの絶望に言及した時、教授が「彼にはキリスト教があるからいい」と即答していた。神も共同体もない底の抜けた個人の行方は…。戦争を挟んで約75年で対称的になる明治から今日までを25年ごとに区切り、自由民権運動の構造、中島岳志らしく当時のテロと今の無差別殺人の共通性なんかも含め細かく論じていて、ああやはり。つまり今戦前の状況に似てきているということだ。さてどうするか、も模索している。上からと下からと両方からの議論は納得できる。それにしても、手っ取り早く毎日絶望できるのがメディアという状況にまでは確実にきてる。現実直視の良い本が怖い時代とは…。

by kienlen | 2016-08-29 21:51 | 読み物類 | Comments(0)

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