『コンビニ人間』

この間会った年配の男性が、飼っているウーパールーパーを見せてくれた。私はこういう存在そのものを知らなかったので形態にびっくりして「これ、食べられるんですか」と単純な疑問を口にすると「あんたもコンビニ人間みたいだね」と言われた。どういうことかと思ったら、ちょうど芥川賞受賞作のこれを読んだところで、そこに出てくるエピソードのひとつと彼の中で重なるのだそうだ。それもあって帰り道に文春を買い、元々読みたいと言っていた娘が先に読み、次に私が読んだ。芥川賞というと、文学であり大衆小説でなく大衆には面白さが分からないというイメージがあったが、これはとっても面白かった。自分的にはジョージ・オーウェルから政治性を引いたような印象。全体に風刺のようでもありベタのようでいてシュールでかなり怖い。読み終えてから選評を読んだら、笑ったという選者が複数いて、へえ、これ笑えるんだとびっくりした。自分にとって笑う箇所はひとつもなかったので色々に取れる小説ということだろう。

コンビニで18年間バイトしていて、コンビニでなければやっていけないコンビニ人間になるという話だけど、これって別にコンビニでなくても会社人間を考えても同じようなものと思うし、自分もいつも仕事があろうがなかろうがそういう視点で物事を見てしまうので、コンビニ人間を特に不思議に感じないが、しかしそこは高度に画一的ながら独特の配慮もあり、それさえ画一性の中に収れんされるらしいのはやはりコンビニ独特なのだろう、というかそういう風に描いているのがすごい。私自身はコンビニの利用頻度がものすごく低い方なので、コンビニってこういうものなんだというのだけで新鮮だったが、そんな次元じゃなくてもっともっと深い世界に到達していた。ウーパールーパー飼育の方は、ここに出て来るような人物は容認しがたく、批判的な意味での面白さのようだったが、それはそれでその時代の人としての言い分は分かる気がするが、いやはや日本の現代の核心的な部分が実に的確にそのまんま内向きに無駄なく表現されていると思った。面白かったし怖かった。これ以上長いと多分飽きるので短さもいい。



by kienlen | 2016-08-14 17:02 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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