『カフカの生涯』

池内紀著、白水Uブックス。図書館にて、易しく読める人物評伝でその時代背景なんかも知ることのできるものと漠然と思いながら棚を眺めていて偶然発見。カフカの生家、書斎、博物館、それにユダヤ人町のシナゴーグ脇のカフカ像と、プラハで意識しなくても目につくカフカだったが、昔、お決まりの変身を読み通したのか途中で止めたのかの記憶もないほど、何も知らない。作家について読んで作品を知ったような気になるのも嫌だしでなるべく評伝は読まないようにしている傾向があったが、何そのカッコつけって感じだし、文学書を読みたい気分でもなくで、ちょうどいいやと思ったらアタリでちょうど良かった。

チェコのドイツ系ユダヤ人という存在がどういうものであって、ユダヤ人の中にも差異があって、親がやり手で出世したことから受けた影響とか、親友がシオニストだとか、異教徒との結婚を許さない様子とか、そういう環境と、それに一番は小役人としてまじめに勤務していた状況と折々の作品とを結びつけながら解説していて、あと、大勢の登場人物を関わりごとに描写しているので混乱しなくて分かりやすかった。女性と結婚に対する引け具合もあこがれ具合も、結局母親的な存在を求めているところも、現代の軟派なバーチャルリアリティー系男性とすごく似ているなあと、そんなことも感じたのだった。時代がどうであれ、人間ってそれまでだし、だから作品も普遍性を持つわけだ。プラハを思い浮かべながら読むには興味深く、色々分かって面白かった。

by kienlen | 2016-08-04 09:20 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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