『民族問題入門』

娘と古本屋めぐりをしていた昨年に見つけて買っておいたのをやっと読んだ。山口昌之著。20年以上も前に書かれたものなので今起きている問題を扱っているわけではないが、起きていることを理解するための基礎知識を与えてくれる。読みやすく、複数の見方を提供してくれているのも大変に良かった。初刊が1994年、ということは、労働力不足から日系人の受け入れを決めてブラジルから大勢入国する一方でビザなしの人たちがたくさん働いていた時期でもある。その中にはタイ人がいて、私は当時タイにいたので、日本に行きたいとか行くことになったとか、大変な日本熱を直接感じていた。道を歩けば「日本に行きたい」と話しかけられたのだから、道を歩けば中国人と間違えられる今とは隔世の感がある。それどころか日本から、将来的にタイ人を雇うことを見越してタイ語を習いに来ていた人もいた。設備屋の跡取りだという若い女性と話したことを思い出した。

この本は日本の中のことを論じているわけではもちろんなくて、民族問題を広い視野から入門的に説明しながら、もっと知りたければ次の文献に進めるようになっている。章立てをみていくだけでいかに網羅的であるかが分かる。まあ、それで、ああまさにこれこれと思って入手したわけだけど。「民族問題のリアリズム」「民族と国民」「民族と知識人」、この知識人との関係は今までみたことのない視点かなと感じた。それから「ナショナリズムの歴史」「多民族国家と帝国」「民族と宗教」「民族と経済と社会主義」…と続く。「難民と移民の問題は、開発問題と絡んでいる意味において21世紀最大の新しい民族問題なのである」がしめくくり。手元に置いて必要に応じて参考にしたい内容。そういえば昨日の映画では中心人物のひとりの弁護士がアルメニア出身だった。この本が出された頃、日本も多民族国家になるみたいな議論がちょっとあったように思うけど、その後、いつの間にか外国人が隣近所にしながらシステムはそうなっていないというのが続いているように感じられる。ここでいう帝国に日本がなれるとは想像しにくい。

Commented by jun at 2016-04-28 07:13 x
お早うございます。日本だって移民したり流入したりした歴史があるのに、いまだに日本人は単一民族だ、なんて言っている人がいますね。憲法草案にもその流れが臆面もなく。あまりアウェーで闘ったことがなかったのが幸せだったというか甘いせいかも知れませんね。
「スポットライト」のモデル記者二人が先週末「be」で特集されていました。映画化での過程では、職場恋愛の構想はきっぱり断ったという裏話がありました。私は迷った末見た映画は「サウルの息子」。kienlenさんの欧州旅行のレポートを拝見していたので、リアルに身にしみました。ありがとうございました。

Commented by kienlen at 2016-04-28 08:46
junさん、おはようございます。あそこに職場恋愛入れたら私はがっかりですね。サウルの息子は観る予定です。
by kienlen | 2016-04-27 11:14 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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