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『ロスジェネ心理学』

1975年生まれの精神科医が、自身と同世代の、つまり1970~80年代前半生まれの世代について「私達」という仲間意識の観点で考察して、同世代に向けて呼びかけるスタイルのエッセイ。実のところ私にとってもっとも身近でない世代がこの辺り。これより上だと突っ込んで話せる友だちが男女共にいるし、これより下だと息子や娘みたいなものなので、彼らを通じて分かるというとおかしいが、想像が及ぶ範囲というか身近な感じではある。それで本屋でパラパラしてみたら悪くなさそうだったので、ちょっと読んでみようかという気になった。世代論に特別な親近感をもっているわけではないけど、やはり無視はできない。団塊は団塊っぽいしバブル世代はバブルっぽいんだから。で、日本でいうところのロスジェネ世代の特徴を冒頭で著者はこう表している。「…有史以来、どの時代の子ども達よりも物的に恵まれた〝飽食の時代〟に生まれ、育てられてきました。……勉強さえ出来れば立身出世につながるという受験システムが、知識階級の子弟ばかりでなく庶民にまで認知され、出自や親の職業とは無関係に誰でも自分の夢に向かって突き進めるようになりました。」

ところが今、「モノ(金銭)にも恵まれないし、こころ(親密さ)にも恵まれない」-そんな期待はずれの21世紀を私達は生きています。」という認識からスタートしている。なるほど。今の部分は、一部の恵まれた人を除いて、庶民の多くが直面していることなのでロスジェネに限らないと私は思うのだが、出発が恵まれていたので、こんなはずじゃなかった感が強いのだろうと思われる。この冒頭を読んだだけで分かったような気になり、ちょうどこの世代の友人に問いかけてみたら、親自身がイケイケどんどんの世代だったからその影響が強いのではないかというご意見だった。なるほどと思ってまたこの本に戻ってみると、こう書いてある。「高度経済成長期を生きた親達に育てられ、バブル景気の華やかな気分と、そうした諸先輩の背中を見ながら育った私達は、年長世代の価値観を内面化しながらも、しかしその価値観を実現できないという葛藤を抱えながら生きることになったわけです」。この矛盾する心理は恵まれた上の世代にも最初から恵まれていない下の世代にも共有されず共感を得られない、というのが著者の見方。この共感されない感は他の世代だってそうだと思うけど…。こういう内容って半端に客観的に書かれたら読むに耐えないけど、これは著者の主観なのでふむふむと軽く読むには嫌ではなかった。




by kienlen | 2016-04-05 11:31 | 読み物類 | Comments(0)

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