『沈黙の町で』

奥田英朗の新刊を読んだ。この人は好きで、何冊か読んでいるけど解説で代表作に入れているのは読んでないようだ。ひとつ、ちょっとひどいなと感じたのがあり、しばらく休んでいたけど『泳いで、帰れ』がすごく良くて、小説家に対して変な言い方だけど信用できるなという感じを持った。それにしても代表作でもない、それに小説でもないのを読んでいる人が身近にいると思わなかったら、この間友だちと話していて泳いで帰れが良かったという話になり意を強くしたのだった。というのが新刊を読もうと思った理由。舞台は中学校で、物語は男子生徒の死から始まる。宮部みゆきのソロモンの偽証みたいな衝撃的な始まり。亡くなったのは地元で羽振りの良い呉服店のひとり息子。田舎の小さな町の事情というのが、重要なファクターとして隅々まで影響している。警察と教師が元同級生だったり、生徒の親同士が知り合いだったり、地元メディアが地元有力者が関係する事件を取り上げられないだとか。

さて、亡くなった男の子はどうやらいじめられていたらしい。いじめていたと目されるグループ4人が捕まるのだが、2人は14歳だから逮捕され、2人は13歳だから逮捕されずに児童相談所送りという分断がある。当然親は法律の理不尽さを感じることになる。小さな町の事情で何も分からないまま立ち消えになるのではないかと思われるが、ここに若い検事が登場して熱心に捜査を進める。しがらみのない中央紙の若い記者に記事をけしかける地方紙記者というのもいて、細部が丁寧でリアルなのでストレスがない。家族関係がステレオタイプ過ぎないかなあと感じて途中でちょっとどうよと思ったりもしたけど、でもこれがリアルなのかもと思ったりもしたし、最後の方はもう面白くて止められなかった。あの精神科医の面影をこの小説で残しているのは弁護士かな。いやいやとっても面白かったです。旅のお供本に取っておけば良かった。ちょっと後悔。



by kienlen | 2016-02-15 18:13 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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