『HHhH プラハ、1942年』

昨夜、やっと読み終えた。時間かかった。費やした時間配分としては前半に大半で終わりの方は一気。最後は途中で止められなくなり気付いたら朝方になっていた。こんなことは珍しい。それに泣いてしまい、眼が腫れるのは避けたいと思い、そういえば若い頃は色々なことでどうしてあんなに泣いたんだろうと思いを馳せた。泣くだけのエネルギーがあったということかもしれない。そのエネルギー、別のことに使っていれば良かったのに、バカだった。いかにバカであるかも分かっていなかったから本物だったんだろう。以上のバカさ加減はこの本の内容に全然関係ない。2014年本屋大賞翻訳小説部門1位とか、第4回Twitter文学賞海外部門第1位とか華々しい経歴をもつらしいが、たまたま古本屋で目に止めるまで存在を知らなかった。チェコ関連を何かと思って、本棚にあるクンデラを読み直すのと、何か歴史関係をと思っていたらこれを見つけ、導入部分を見て購入決定。ところが導入のとっつきやすさでそのままいくわけではなくて、形式とか表現に慣れるまでは結構時間がかかった。

どう読んでいいか分からないタイトルの意味は「ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる」という文章の頭文字であったり、ヒットラー、ヒムラー含めて名前の頭文字がHなのをかけているようだ。ナチの関係の本は大量にあることもあり、それにやはり興味深いので少なくない量を読んでいるが、その都度苦しくなり、今回ももちろんそうだった。登場人物はすべて実在で、主人公というか、著者が顕彰しているのはナチの高官で「金髪の野獣」と呼ばれたハイドリヒを暗殺しようとイギリスのチェコ亡命政府がプラハに送り込んだ2人の青年。そして命をかけてレジスタンスに関わった人たち。資料に基づいた事実での構成という中に、著者が時々登場し、資料にない部分を想像したり、歴史上の人物の後をつけたり、思い入れを語ったり、他の小説家の描写の批判をしたりする。フランス人の自分がチェコの人々を描けるのかという苦悩を吐露したり、歴史のある瞬間と今の政治家との関係を検証したりも。こういうスタイルは、著者が物陰にいるものよりも私は好きだ。とてもいい本だった。そして地の底から怖かった。



by kienlen | 2016-02-13 13:49 | 読み物類 | Comments(0)

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