『現代小説作法』

大岡昇平著。小説の書き方本の何冊目かな。だいたいは図書館でほとんど手当たり次第的に借りて、読めるのは読んで読めないのは読まないという風にしているけど、こちらは書店で購入したもの。ちくま学芸文庫。ちくまがんばれ。それにしても小説の書き方本がこんなに氾濫しているのは知らなかった、と毎冊感嘆。ただこの本は作法というタイトルになっているし、小説はどう書きだすべきか、作者の位置について、ストオリーについて、プロットについて…と、章のタイトルを見てもそれっぽいけど、中身は小説について言いたい放題という感じの文芸評論みたい。面白くて笑えて楽しい本だった。名作の誉れ高いのも手ばなしに褒めているのはほとんどなくて、どこかでチクチク批判している。迎合的でなくてすごく好みです。1958年から文學界に連載したものだそうだ。今の文芸雑誌にもこういう連載あるんだろうか。あったら読んでみたい。

珍しく引用。第八章主人公についてから。〝デモクラシーもひとつの神話であり・・・・三つのファシズム体制を生み、続いて破滅させましたが、その時ペテン師的指導者が拠りどころとしたのは、現実を見つめる根気と意志を失った大衆でした。〟いやあ、いつの時代にも通用する言葉です。第二十二章文体について、では、島崎藤村の言葉の使い方について〝「寝る道具」なんて日本語はありません。「蒲団」で沢山です。「物を食う道具」は今日なら「食器」ですが、藤村の時代なら「茶碗」です。これは単なる気取り、偽善です〟とまで書いているのだが、寝巻とか箸とかお皿とかはどうなるのか、寝具って言葉は寝る道具と辞書にあるが、当時まだ定着していなかった新語なのかとか気になり、島崎藤村に恨みでもあるのでしょうかと面白かった。偽善です、と畳みかけるほどとてつもない表現なのかな。含蓄いっぱい、時々笑える、いつも傍に置いておきたいと思った本だった。もう1度、ちくま学芸文庫がんばれ。


Commented by jun at 2016-01-16 06:55 x
自分が書店の経営者だったり、出版社勤めだったら大変だなと時々考えることがあります。また最近、小説を読んで分ったことは中身だけでなく著者を取り巻く生活こそが面白いですね。
ちくま学芸文庫は借りずに私も買ってみます。
時々笑える、というのはいいですね。それにしても「作法」というタイトルも笑えます。お前が言うか、って大先生に向かっていっちょかみしたいです。
Commented by kienlen at 2016-01-16 08:13
junさん、おススメです。そうですねえ、4~5回は笑ったと思います。小説の書き方本って、それを書いている人の考えが表面に出てるので面白いです。
by kienlen | 2016-01-14 15:03 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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