『家守綺譚』

貴重な本好きの友だちから、梨木香歩が好きだという話は何度も何度も何度も聞いていた。かといって自分で買って読む必然性もなく多分何年も過ぎたかと思う。つい最近会った時、その友だちが丈夫な紙袋を差し出した。単行本3冊入っていた。梨木香歩2冊、京極夏彦1冊。それなりの厚さがある。読みたい本だらけなのでこの上どうかと思ったが、ちょっと試しに梨木香歩のこの本を開いてみたら、これがもう、手ぶらで何の心の準備もなく人の家に寄ったら、いきなり心地良い人たちばかりのお部屋に案内されて夢見心地みたいな感じでギャーと叫びそうになった。たったの2ページで友だちにその由LINEしたら「私はダーシーに引きずられてます」の返事。ダーシーって何?と送ったら、自負と偏見のスーパースターだった。そうだった。友だちは今あっちだった、すれ違い。

それから娘に聞いてみた。梨木香歩って知ってますかと。「超有名だよ、読んだことないけど」の返事。私は「漱石と芥川を混ぜた感じ」と送った。娘なら「どういう意味よ」とまでは突っ込んでこない。単なる直感でいい加減に言ってるだけだと、20年も親を観察していれば分かるのだろう。そんなわけで最後まで読んだ。舞台設定から登場生物から文体から全体にレトロな空気感がいっぱいで技巧的で内向的。どういう層の人に受けるんだろうか。大衆的とはとても思えないのだが。文学的で、強い毒気はないけど、所々に軽く刺さる部分があって、そして何より排他性が皆無。生者も死者も目の前に現れるものも見えないものもすべてOKで共存。こういう世界があったらいいなあというある種のユートピア、これって一種のファンタジーなんだろうか。この友だちに「どういうジャンル?」と以前に聞いたことがあったけど、いつになく言い淀んでいた。その理由が何となく分かった気がする。



by kienlen | 2015-12-06 10:56 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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