『朗読者』

読書会の課題だったので何気なく図書館で借りた。何も知らずに読み始めた。ああ、ひとつ知っていたことがあった。映画化されていること。予告編を見たことがあった。ちょっと不思議なタッチの恋愛映画かなと感じたくらいで、あえて見たいと感じるほどでもなかった。朗読者というのが原作だと、どこで知ったのか覚えてないが、何となく知っていた。あの前に原作を読んでいたら絶対見に行ったのに。今回何も知らずに読んで、最も好きな1冊に入れたいくらい好きになった。始まりから3分の1くらいは15歳の少年と年上の女性の恋愛関係をかなり執拗に描いていて、一体展開はどうなるんだとやきもき。一人称で分かりやすく、描写が繊細ですとんと入ってくるので良かったけど、そうでないと飽きるなあというギリギリのところ。

ところが途中で場面がすっぱり切り替わる。衝撃だった。法廷での被告の描写が、こういう風に諦めてこういう風に気持ちも態度も推移するんだろうという様子が、ああ分かる、分かる。法律を学ぶ息子と哲学教授の父の会話。自分にとってはここが白眉だろうか。息子の視点からの描写だけど、そこでは語られていない親の子どもに対する姿勢なんかは、語られていないだけに余計に胸が締め付けられるようだった。あと、日常的に際限なくあるジレンマと選択の問題。謎解きみたいな面もあるので、肝心なことには触れられない。小説読んで心から泣いたのって、いつ以来だろうか。ドイツの作家シュリンク作。話題作なのだそうだ。日本での発行が2000年。そうか、仕事もあって勉強もあって子どもも小さくて、それに経済状況はひっ迫し、今から振り返るとメチャクチャだった時期だ。本は離せないけど、小説までの余裕はなかった。ちょうどこの間一泊したストラスブールの近くの収容所を主人公が訪れる場面もあった。堪能。素晴らしかった。

by kienlen | 2015-11-04 20:41 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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