『小説作法ABC』

島田雅彦著。小説を書いてみようかと思って図書館に行ったら、小説の書き方のコーナーができているくらいにたっくさんあってびっくりした。こういう本って、そんなに需要があるんだろうか。文章だったらみんなに必要だろうけど、小説で。まあ、それで10冊近く借りた中の1冊。借りた動機は単純に、島田雅彦だから。筒井康隆のを平行して読み始めて、こちらを先に読んだ。出だしから面白かったので、図書館のじゃあ線も引けないし返却しなくちゃならないし参考書にするには手元に置いておこうかとアマゾンを見たら結構低い評価だった。そのせいで、というわけではないけど、いつでも読めると読まないという面もあり、まずは図書館のを読み切ることにした。小説って何というところから歴史的に網羅的に紹介しながら実作の場合のポイントを伝授しながら批評もありの盛りだくさん。大学の講義だけある。オーソドックスで上品で基本的で分かりやすくてごもっともな内容。

書き方についてはともかく、特に評論的な部分が興味深かった。自分がそういうものをほとんど読んでいないからというのはあるけど、村上春樹本は「おのが趣味の世界に引き籠り、身の回りで起きる不思議な出来事をファンタジーのスタイルで語る作風は江戸戯曲との類縁性が高い」など、江戸戯曲を知らないくせに納得してしまいそう。なぜそうなのかの時代説明もちゃんとあるし。村上春樹のグローバル商品の秘訣は「誰も傷つけず、万人を心地よくすることにあります」。私の周囲には逆に、心地悪くなっている人もいるけど、一般論ということで。「作品のディズニーランド化を図ることだといってもいい」「手軽に現実逃避ができるテーマパーク」「村上ワールドは理想化された日本の箱庭でもあり、いかにアメリカを取り込み無害化するか、そのノウハウを示すモデル」とも。それでアメリカとの付き合い方が未来を左右することになるロシアや中国で流行るとも。なるほどー。小説の作法よりこっちに気を取られてしまった。


by kienlen | 2015-10-24 17:07 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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