『無理』

奥田英朗の本。面白い。そして分厚い。現代日本社会を大盛りにして大サービス的な物語。舞台が、若者の人口流出が止まらない地方の町。合併して市になった。はい、どこにもあります。登場人物はまず生活保護の担当として出向中の県職員。はい、どこにでもいそうなタイプ。受給者の怠惰な生活とふてくされた態度に腹がたち、上からの支給額減額圧力に同調。とってもありそう。次の主人公が暴走族グループで結構威勢がいい人達。ここまで元気な若者が今時いるのかどうかはちょっと分からない。でもこの人間関係はとってもありそう。外国人問題。新興宗教に走る主婦。こういう町の二世議員の傍若無人ぶりも、はい、ありそう、ありそう。

他にも色々出て来て、これがどこに収れんしていくのか、という前に、それぞれのステレオタイプがどんどん極端になっていっていかにも小説になっていくのだが、一歩踏み出せば現実だってそうだよな、というリアリティがある。正義の味方的な人物が皆無なので、日常性いっぱい。おかげで実に憂鬱になり、これを読んでいる間、自分及び家族がこれでもおかしくない、あれでもおかしくないと当てはまるケース多く、どっと憂鬱になっていた。とにかくほんの紙一重で生きて来た感を絵巻物のように見せていただいたって感じだ。最後はいかにも小説らしくまとまっているが、別にこの最後がなくても、それぞれが短編的に楽しめた。奥田英朗って、このストレートさがいいなあ。満足でした。

by kienlen | 2015-01-12 13:08 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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