夜毎の電話

このところ、睡眠薬が効く11時まで付き合ってくれという友人から毎晩電話がある。「苦しいんだよ」と言うから「その苦しみに付き合う方も苦しいんだよ」と言ったら「友達だからしょうがないよ」と言われた。彼はもう何十年も仕事をしていないし、猫以外の同居人はいないし、やっかいな人間関係はないし、やりたくないことをしているわけではないしで、つまり当方のような労働者との間には話題がない。ひとつ手がかりがあるとすれば、元は文学の先生だから体調がいいと本を読むようなので本の話題かなと思うが、私は文学のことが分かるわけではないから長くはもたない。

それでも、たまに何読んでいるのか聞く。この間は、村上春樹、と答えた。へえ、何で?と聞いたら、あんなに記憶に残らない文体はないから、ということだった。そういえば彼が引っ越す時に本を分けてくれた。私には村上春樹のノルウエイの森だったな。まだ読んでないや。入院したら統合失調症がかなり改善したそうで、デイケアに行っているそうだ。そこでの人間模様が面白いから小説を書こうかなと言うから、書いてよと言った。ワープロの感熱紙がないよという。何十年も仕事してない間に世の中は変わったんだよと教えてあげた。パソコン高いでしょ、というから、欲しいと言いふらしたらくれる人いると思うよと言った。そうしてお付き合いしているうち、気まぐれに電話が切れるのだった。11時前だとまたかかってくるかもしれないが、11時を過ぎると大丈夫らしい。

by kienlen | 2014-11-27 23:09 | その他雑感 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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