かかった後の人生を考える本

岸本葉子『がんから始まる』を読んだ。たまに雑誌のエッセイで見るだけで特に好きというわけではないが、軽く読めるものをと思って買った文庫本。40歳でがんと診断されるところから入院、手術、退院後の生活を綴っている。エッセイストとして充実した日々を送る独身の1人暮らし女性。煙草も酒もやらない。玄米食まで実践していたので当人にとっては思いがけない病だった。生への肯定感と執着はとても強く、自分はここまで前向きになれるだろうかと思いながら読んだ。専門家としての医師との話し合い以外の決断は1人でする。身近な人としては父親が登場するが、拠り所とか相談相手という役割からはほど遠い。「再発リスクを抱えてどう生きる?」が帯の文句。生き方の書に入るのだろうが、がんという具体的な相手があるだけに自分との向き合い方が半端ではない。恋愛感情を抱くと人は詩人になるというが、がんを患っての表現というのは、澄み切った視界の中に潜む言葉を自分の中に強固に定着させているというような印象を受ける。

ここまで気合が入らない書としては、以前に読んだ頼藤和寛『わたし、ガンです。ある精神科医の耐病記』が良かった。これはテーマで選んだわけではなくて、著者が好きだからという理由。子供がまだ小さかった時に偶然図書館で借りた『ホンネの育児論』というのが、まず必ずつまらない育児書としては異質な面白さで笑えて手元に置きたくなって返却後に書店で注文した。耐病記を最後に著者が亡くなった今は入手不可能本となっているようだ。こちらも帯の文句は似ていて「かかったあとの人生」。人生論の一種として読める。ニヒルでユーモアたっぷり。今更恐れるものなしで、業界の事情にも言及。この期に及んで「リアリティだけがもつ露骨さ面白さを求める向きの期待だけは裏切らないだろうと思う」とのサービス精神発揮をまえがきで宣言している。確かに裏切らないが、そういう人にはもっと生きて書いていただきたかった。
Commented by fdsalkj at 2006-05-19 08:47
ブログサーフィンしてたら、たどり着きました♂♂遊びに来てください~
まつてま~~す☆☆☆
by kienlen | 2006-05-18 20:23 | 読み物類 | Comments(1)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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