ある精肉店のはなし

このモヤモヤ感は、仕事が虚業であることと関係しているように感じられてならない。これはずっと引きずっている感覚で、もうずっと前にこの感覚からおさらばしたいと思ったことがある。でもできなかったから何かと理屈をつけては持ちこたえている感があるが、やっぱこういう映画を見ると、なかなか響くのだった。いやはや、素晴らしかったと思います。祝の島の監督さんなので面白いかなという期待はあったけど、タイトルは地味だし精肉店の話しって何なんだと予想がつかないまま試写会へ。最初からこれは面白そうだなって感じて、そのまま最後まで。見終わって気付いたらすぐ近くに知り合いがいたので思わず「びっくりしたあ、良かったあ」と言うと「当然でしょ」みたいな顔をされた。

もはや「精肉店」から私などが想像するのは肉を切ることくらい。八百屋が畑から毎朝野菜を自分で収穫してきて店頭に並べているとは想像しないのと同じ。しかしこの映画の精肉店は違う。家族で牛を育てて時期がきたら近所の屠畜場に引っ張って行って、家族が協力して屠畜して内臓から肉からきれいに捌いて自分らの経営する店で売る、そして自分らも食べるのだ。やはり自分は出自が出自だけに高度な文化よりもこういう生き物としての原点の方に惹かれる傾向があると思うが、それって逆にあこがれのレベルになってしまっていることも感じる。つまりもう現代人としての自分は生き物としての体を為してない、というモヤモヤ感。人間の宿命といえばいえるかな。露出オーバー気味というか、光に満ちた映像がきれいだったし、全体の奇をてらってない感じもひじょうに良かった。生きるって何かなあとか家族って何かなあとか思春期に戻ったみたいに眩しかった。記録として貴重でもあると思う。
by kienlen | 2014-03-25 10:32 | 映画類 | Comments(0)

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