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『消された一家―北九州・連続監禁殺人事件』

少し寒さが緩み気味。時間はあっという間に過ぎていく。1月も終わりに近い。なんということでしょう。自分が何をしているのか分からなくなっている。仕事なんだかそうでないのかの区別がますますつかないし、生活全体が乗っ取られている感がある。そんなところにこういう本を読むと、考えさせられる。とはいえ、ここまでくると半端な乗っ取りではない。あまりの凄惨さに悪夢まで見てしまった。事件の記憶なんて、関係者でない限り、その時はショックでも薄れていくもので、家族が殺し合ってほとんど全滅したという信じられない事件も、そういえばあったな程度になっていたし、報道で知るだけなので背景は知らない。裁判の傍聴を重ね、周囲に取材したのがこの本で、記録として残しておく価値は高いと思う。それにしても内容はおぞましい、猟奇的とはこういうことか。

著者も書いているけど、最後まで分からないのは、関係者を片っ端から支配下においた男がどういう人なのかということ。生育環境がほとんど出てこないので闇の中だ。人を支配することを目的にした言動を学んでやったとすればすごい知能犯だし、意識的でないなら生まれつきの悪の天才ということになるんだろうか。単純に割り切れるものでないにしてもそこは知りたいと感じた。でも比較的最近の尼崎のも多分こんな感じなのだろう。で、肝心なこと。ここまでになる前に何がストッパーとなるかは感じさせてくれる。まず嫌なものは嫌という健全な価値判断を持つことで、世間体に縛られるのは危険。マイナス思考はダメ。固執しないこと、柔軟であること、月並みだな。それがこのレベルの犯罪者に通じるわけがないか。被害者の中には元警察官も含まれる。支配と被支配の関係は社会を形成せずにおられない生き物にとって永遠のテーマなわけで、犯罪というのはそれを見えやすくするのだから、死刑にして済むのじゃなくて研究と公表はしてほしい気がする。その意味で貴重な本と思うが読むのはものすごく辛い。
by kienlen | 2014-01-25 09:48 | 読み物類 | Comments(0)

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