『誘蛾灯―鳥取連続不審死事件』

青木理著。2009年に鳥取県で起きた、男性の連続死事件のルポ。この事件、記憶にあるようなないような…。同じころに埼玉で起きた事件のルポは2冊読んでいたので、こちらをどう描いているのかに興味があって注文して読んでみた。30代の、とても魅力的とは言えないという5人の子持ちの女性に金を貢いで、本の表現によれば「奈落」に落ちた男性たちが大勢いて、そのうちの6人が死んだという驚くべき事件。事件の舞台となった鳥取が日本の県の中で人口が最も少なく交通網が日本一整備されておらず、いかに疲弊しているかをどんよりと執拗に描いていて、この事件のどんよりした様相とパラレルになっている。最後の最後まですっきりしないが、一番驚いたのは、警察、弁護側双方の杜撰さを露呈した驚くべき裁判の様子かな。びっくり。事件そのものもかなり奇怪だが、それにも増して奇々怪々。

著者と一緒になってだんだん事の真相に迫っていくという感じが面白いけど、結局真相は分からない。そこでどう締めくくるのかに興味があったが、最後の著者の見解はひじょうに納得だった。人間に対する見方で共感。ああ、こう感じているのは自分だけじゃないよなーっていう感じ、というか。それにしても、著者としては意義を見出していないという生い立ちから探るという手法ではあっても、ここまで嘘つきまくりになるにはどういう生育環境があったのかはちょっと知りたいなという気がした。安易に結び付けないとしても、ひとつの考察要素として。嘘だと分かって騙されてみたいという人間心理に付け込んだものなのか、つまり大人になって修得した嘘なのか、子どもの時からだったのかくらいでいいので。
by kienlen | 2013-12-28 22:19 | 読み物類 | Comments(0)

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