ここまで一方的な視点で書ききることへの感動

ロバート・ベアの『CIAは何をしていた?』を読み終えた。映画『シリアナ』を観る前に読んでおくべきだった。そうしたらもう少しは理解を深めることができたかもしれない。とはいえ、この本も内容把握からはほど遠い。知らない国名、地域名、都市名頻出、人名ときたら、最後に9pに及ぶ人名索引があるくらいで、もともと記憶力が良くないこともあってお手上げ。それでもなお面白くて、結構な長編だが飽きずに読めた。フォーサイスとかジョン・ル・カレとか、若い時はスパイ物が好きだったし、今もその傾向はある。単に興味だけで本が読めるならこの類が一番多くなるかもしれない。この本は、76年にCIAに入局して97年に辞職するまで勤務した著者が、その間の体験を子細に綴ったノンフィクションで、単純化すると、中東を中心とする赴任地での戦争を含む体験を冒険物語風に描きつつ、CIAの方針転換への危機感を募らせ、本部に戻ってから目の当たりにした、ワシントンに流れ込むオイルマネー、隅々にまではびこる事なかれ主義への最終手段=告発、の書。

CIAの活動全体についての知識がないし、全体的に見てこの本に書かれていることがどういう位置づけになるのかは分からないにしても、私は、この著者のある種の正義感みたいなものは好きだ。結びの章では、9・11当日に触れながら「私は権力者の堕落ぶりを思うと、激しい怒りをおぼえずにはいられない。われわれはそれだけの権力を付与した人々に、もっと多くを期待する権利を有しているのだ」と述べている。もっともだと思う。しかし、最後まで解せない点は、アメリカを狙うテロリストはただただ絶対悪で極悪非情で何の理屈も動機もなしにテロ行為を行っているとしか読み取れなかったこと。それが事実なのだろうか。アメリカが狙われる理由が何かあるんじゃないかと懐疑的になるのは、CIAの仕事の範疇ではないのだろうな。それにしても、ここまで自分の職務と自己を一体化できるものなのだろうか。本書を元にしたという『シリアナ』では、自爆テロリストとしてリクルートされる青年を、社会的背景から描いていて、それは説得力あるものだったが、あれは映画化にあたっての脚色だったのだろうか。アメリカのリベラルが結集したということだし。それを思うと、この本は相当に暴力的な1冊に思える。
by kienlen | 2006-05-08 23:33 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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