『家族』

南木佳士著。何か軽いものを読みたいと思って本棚を見ていて見つけた。なぜこれがここにあるのか覚えていない。買った記憶も読んだ記憶もない。誰かがこんな狭い場所に挟んでいくとも考えられない。チラッと見たらとても面白そうだったので読んだ。深く深く感動した。もう少しで終わりそうな時に本読みな友人に、すごくいいよメッセージを送らずにいられなかったくらい。そして中古本4冊まとめて注文した。この1冊読んだ限りでは、自分にとって最もフィットする作家かもしれないと思った。とても安心感を覚える。対象と表現の間の距離、というのも変だな、そもそもその境界をどう引くかだから、そのようなものということにぼかしておくとして、そのようなものに全く違和感を覚えなかった。繊細そうで実は違うかもみたいに流れるような文章も大変良かった。食事に関してデザートは別腹なんていう言い方があるけど、本についてもすらすら入るのは読書という入り口じゃなくて全身に浸透する感じだな。こういう感覚って珍しい。

中島義道と清水哲男が引用されているのにも感動。でも一番引用されていたのは大森荘蔵だった。読んでみたい。読めないと悲しい。親を恨みたくなるのはそういう時だな、お門違いも甚だしいが、哲学を希望した時に取り合ってくれなかったことで。生きにくさはあれから始まった、と少しくらいは自分を飾り付けてみたいものだ。それにしても、名前は知っている作家だったのに、読もうって気になったことがなかったのは残念だった。でもこういうのは時期も関係するから、早くに読んでここまで感動したかは分からない。いや、これだったら自分のような者の場合はいつでも感動しただろうな。思いつきで注文した4冊、早く来ないかな。以上、ベタ褒め。これって分類すると私小説ってことだろうか。線を引くどころかスクラップしたい箇所が2つあった。そしてなんで本を読むのかなという原点にも触れた感じ。本といえば昨夜、試写会の会場で知人にばったり。スティーブ・ジョブズの映画のポスターがあったら「この人の評伝面白かったー、映画も見たいなあ」と言ったら「役に立つ本?」と聞かれた。役立つ、かあ。通りすがりだったのでそこでストップしてしまったが、なるほど。その意味でこの本って役立つの逆かもなあ。一目惚れの感じと似ているかも。
by kienlen | 2013-10-16 09:02 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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