『映画の構造分析』

副題に「ハリウッド映画で学べる現代思想」とあり、帯には「名画で哲学講義」「寝ながら学べる構造主義」等の惹句あり。学生向けだろうか、ちゃんと勉強してない自分としては学生向け本こそ読まなければ、とか若い時なら思って、そうだ哲学だ構造主義だ知りたいが、読みたいの動機になっていたかもしれないが、さすがに年を取るとその辺りはてんで楽になり、まえがきを読んで単純に面白そうだと思って本屋で購入したもの。まあ、書いているのが内田樹先生だからという理由が一番大きかったのだが。そして読み始めたところで娘が持っていき戻ってこなかった。このところ読みかけては挫折あるいはちゃんと読まずに目を通すみたいなものばかりで、結局費やす時間は同じなのに満足感なしでこの本ならばと思って、もうじき終わるという娘から取り返した。予想通り、ハリウッド映画も構造主義もろくすっぽ知らない者にも面白く読めるのがありがい本だった。

ここまで言い切ってってすごいなあと感じるところもあったけど、ひとつの分析として、というか、この本の目的は映画の分析そのものじゃなくて、映画を分析することを通じてラカンやフーコーやバルトを説明することにあるということなので、言い切っていいわけだ。思想について分かっているともっと面白いのだろうけど、分かってなくても、この本のもっと大きな目的であるらしい、出てくる映画が見たくなる、にはしっかりはまる。仮に見ていたとしてもこれを読むともう一度見たくなることはあると思う。私はろくに見てないし、多少見たのがあっても覚えてない。大脱走が比較的場面を少し思い出せるかなという程度。私にとって一番理解しやすくてとっても面白かったのは最終章の「アメリカン・ミソジニー」だった。フェミニズム批判も相当含まれていて、それは納得できるものだった。アメリカに感じる違和感のひとつはこれかなあ、と大変に納得できた。宮崎映画に登場する女像がアメリカ人には理解できないという下りも面白かったな。ホントかなあ。もしできれば、この内容についての解説というか、いやいや別の分析だとこうだ、というのがあったらそっちも読みたい。これだけだと秤の一方に重しが載り過ぎてガクッと地に着いた感じで、もう少しだけ浮かせて欲しい感じ。しかし映画を楽しむ素材のひとつとしてはとっても面白かった。これを片手にDVD…なんてやり出すわけにいかない、もうしばらくは。
by kienlen | 2013-10-12 12:21 | 読み物類 | Comments(0)

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