『「アラブの春」の正体-欧米とメディアに踊らされた民主化革命』

著者の重信メイという名前に興味を抱いて手に取ってみたらやはり重信房子の娘さんだそうだ。パレスチナ人の父との間にレバノンで生まれ無国籍で育ったそうだ。肩書はジャーナリスト、中東問題専門家。こういう経歴だと日本の学者さんとは違った視点かもと思って買ってみた。この本を読み終えてから、シリアの政府軍が毒ガスを、とかいうニュースを見てもまるで信じられなくなった。シリアの章は最後にあって、著者が比較的最近滞在した時の様子を交えながら解説している。デマが多いというのは漠然とは聞いていたけど、どういう経緯で誰が、というところまで探るほどの知恵も時間も方法も必要性もないし、という場合、こうして活字でまとめて読めるのはありがたい。とにかく中東のことって分からない、と思わないで下さいというのが趣旨らしく、初心者向けの説明が行き届いている。各国の事情を個別的に且つ比較的に説明しているのでますます分かりやすい。

どれも驚きだった。マスメディアの報道がそのまま信じられると思っているわけではないけど、それにしてもここまで具体的に背景を説明していただくと戦慄。ちょうどアルジャジーラのアメリカ進出というのが大きなニュースになっている時、どういうことなのかなあとは感じたけど、中東報道の大きなキーがアルジャジーラでありどういう影響を持っていて当初がどうで今はどうなっているというところの説明もここでかなり詳しい。なるほど、って感じ。リビアのカダフィについても知らないことばかりだった。中東の国の位置関係も知らない読者を対象にしているようで章ごとに地図を掲載する配慮もありがたい。文章間のつながりがちょっと分かりにくくて読み返しが何度かあったけど。ナントカ入門みたいな解説本だと臨場感に欠けてサクサク読むというわけにいかなくなりがちだが、これだと今を描きながら背景を子細に平易に解説する入門書として理解しやすい。少なくともニュースを見る時の一種のメガネにはなる。そして大国の踊りの下で踏み潰されるのは国民ってこともよく分かる。
by kienlen | 2013-08-22 08:40 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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