『人を殺すとはどういうことか-長期LB級刑務所・殺人犯の告白』

著者は美達大和。この本での著者略歴をそのまま紹介すると、1959年生れ。無期懲役囚。刑期十年以上かつ犯罪傾向が進んだ者のみが収容されるKB級刑務所で服役中。罪状は二件の殺人、ということ。本の存在を知ったのは『反省させると犯罪者になります』を読んでいる時で、その本の著者が新潮社から出したかったのは、新潮社が獄中から送られてきたこの人の原稿を出版したことに対しての評価があったからみたいなことが書いてあった。著書は何冊かあるが、まずこれを読んでみた。知能指数の大変高い人だそうで、まさに只者ではないというのが分かる論理展開。こんな麗句を散りばめた本をあまり知らない。私は大変興味深く読んだし、出版の価値のある内容だと思った。大きくふたつのパートに分かれていて、まず自分の生い立ちや性格の傾向などについてひじょうに客観的に分析的に紹介している。裁判に向かう態度もお見事で、逆に常識としてまかり通っている茶番が露呈する。とはいえ殺人者なので、と自省的、自制的ではあるが、その心境に至るまでの説明も分かりやすい。

次が同じ刑務所に収容されている囚人のインタビュー。ここもふたつに分かれていて堅気の人とヤクザの人。日本でも数少ないLB級であるから、故意かどうかに関わらず人を殺めた人ばかり。この場面は、同じく殺人者という立場で、しかもここまでの能力の高い人でないと聞けないだろう、ここまでの分析はできないだろうという深い部分に達していて、日ごろあまりこういうことを考えていない人は気持ちが悪くなるかもしれない。反省してますなんて、大方は仮出所のためのポーズであるというのが著者の見立てである。自分がなぜ興味を持つかというと、犯罪の加害者になるかならないかの一線があるとすれば、それは何なんだろうという興味だ。つまり人間って何なんだということと同じかもしれない。なかなかすごい本ではあるが、私は何の抵抗もなく読めてしまったな。著者の博学ぶりはすごい。刑務所から出版社にどうして原稿が渡ったのかの推測は解説に書いてある。なるほど、あるかも。
by kienlen | 2013-08-14 10:02 | 読み物類 | Comments(0)

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