『桶川ストーカー殺人事件―遺言』

仕事の前にちょっと読もうかと思って読み始めたら止められなくなり昨日の午前中は読書に費やしてしまった。まったくなあ。その上えらく泣いてしまって目が腫れるほどになりパソコンに向かってもぼーっである。まったくなあ。本末転倒な日々。桶川ストーカー事件はさすがに名前だけは知っていたが、かといって事件の詳細を知っていたわけではない。何しろテレビを見ていないというのは大きな欠落だらけ。そういうわけなので逆に先入観を持つほどの情報もなく、何冊かアマゾンに注文するついでに何となく買ったもの。もう10年以上も前に出版されたものだが、最近9刷になっている、新潮文庫。これは多分何年たっても色あせることはないし、それどころか、気骨のあるジャーナリストが少なくなっていると言われる時代が進む限り必要性の高まる内容じゃないかと思う。素晴らしかった。著者の清水潔さんに拍手喝采を送りたい。

この内容を報じる意義はひじょうに大きいと思うので、それ自体が素晴らしいと思うけど、もちろん事件も展開も酷いことではある。ひとつは事件の性格そのもの。全く普通のお嬢さんがなぜ殺されなければならなかったかという事情を知るにつけやるせない。娘には絶対に読むように伝えてある。次が警察発表とマスコミ報道の問題。記者クラブの問題はさんざん言われていることだが、ここまで現場の記者の方が具体的に書くのは難しいと思う。だって事実が何かを知らないと比較できないからはっきりした批判もできないはず。その点でここではくっきりはっきり説得力は抜群。そして警察の問題。この場合は埼玉県警。これはもうちょっと想像を絶する。警察が頼りになるならないとかいう次元ではなくて、組織の腐敗もここまで根深いと、事はなるべく穏やかでありたいと願う自分のような者でも根こそぎしないとどーにもならないんじゃないかと怒りが沸いてくる。著者の怒りは当然ものすごいのだが、やみくもに告発しても潰されるのが分かっているだけに、それを覚悟で、しかしなかなか巧妙にやっていくあたりはドキドキする。フォーカスという雑誌がここまでがんばっていたと知らなくてすみません。なくなってしまったもんな。あとがきに衝撃的なことが書いてあり、一番泣いた。色々な意味で素晴らしいと感じた一冊。これで630円。価値あり過ぎ。事件って社会の産物だと思うので元々興味があるが、そのことが色々な角度からよく分かる内容。ハードボイルタッチの文体もいい。感謝。
by kienlen | 2013-08-13 09:09 | 読み物類 | Comments(0)

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