『私だけの安曇野』

ごく若い頃に好きだった丸山健二。単行本で何冊か今も本棚にある。好きだった記憶はあるけどなぜ好きだったのかは覚えてない。そういう作家を読み直すというのは、がっかりしたら嫌だなという感じがする。何に対して嫌なのか、多分自分に対して。見る目ないなあとか、思ったりして。これは本棚にあった古い文庫本。昭和61年の3刷。57年に初刷で、その前に単行本だったそうだから、で、その前は朝日ジャーナルの連載だったようなので書かれたのはもしかして昭和40年代ってことになるんだろうか。少なくとも50年代の前の方であることは確かだろう。安楽椅子エッセイなのかと思っていたら全然違って、カメラマンと一緒に取材しているもの。こういうことを丸山健二がやっていたことも知りませんでした。それで、ほっとしたのは、なんで自分が丸山健二が好きなのか、自分なりに判ったことだ。がっかりしなかった。今年は無理だが来年になったら昔の小説を読み返すとかその後読んでなかった作品を読むのもいいかもと思った。

短くないが、長過ぎるというほどでもないエッセイを収めたもので、タイトルの通り、安曇野がテーマ。安曇野という知名度の高い地域の地域性とか人間性の本質的なところを描いている。経済成長期、地方がどんどん都市化していく時期という時代背景は今と違うけど、古めかしい感じは全然なく、とても面白かった。実は友人からまとめて借りている本があって、その中にエッセイもあり、たまには読んだことのないのもいいかなと思って読み始めてはいたのだが、最後まで行き着けない。なぜだろうかと考えていて、思い付くのは、舞台裏を感じないのはどうもダメっぽいということ。つまり、言いことはこれだけど表現としてはこれ、という感じがないと苦手なのだ。これを書きたい、というのがそのまんま伝わるのだと、だから、とその奥に何か置いておいてくれとお願いしたくなる。風呂で読んだので時間かかってしまったが、実に素晴らしいというか、スタイリッシュでしたね。良かった良かった。
by kienlen | 2013-08-11 11:19 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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