『魔女の1ダース』

正義と常識に冷や水を浴びせる13章、というのがサブタイトル。著者は米原万里。何度も書いたけど、この人が元気だったらもっともっと書いていただけたのに、ああ、本当に残念。図書館で借りたもので1996年の刊行。前に読んだような気もするが覚えてないし所有してないし、新鮮に読んだ。大変に面白かった。1ダースなのになんで13章なのってのも書いてある。多分全体のコンセプトは、正義だ常識だと思っていることだって視点をずらすとこんな風に見えるんですよ、というところで、それをソビエト学校に通っていたことや通訳や博識やというご自身の資本を発揮しながら楽しく書いているもの。ロシアのジョークはよく紹介されているけど、こういうのって日本だと落語が匹敵するんだろうか。さすがにこの時代だから生きが良くてぴちぴちした感じ。

最後の方に、これは佐藤優であろうと思われる人物が登場する。仮の名前が付いていて、それで呼ばれているのだけれど、そう思われる。現役の頃だ。今なら実名で登場するかもしれないが、書き手の方がいなくなってしまった。ふたりの会話なら楽しく何日でも続くのではないだろうか。人物描写も面白いが、その人物が話したエピソードも面白い。そもそも人にとって弱みとは何かというようなテーマの章で、KGBが故スカルノ大統領の情事を細かく撮影して脅そうと思ったらしいが、したたかなスカルノが、撮ってくれてありがとう、と言ったものだから、弱みにもならず、作戦を変えたとか。日本の政治家でこういうしたたかな人って誰なんだろうか。後になって、物書きになってから通訳の依頼が減っているみたいな下りがエッセイに出てきたような気がするけど、そりゃあそうだろうな。加工したところでネタにされそうだし。しかしネタにされるのも面白くてありがとうって言うほどだったら違うだろうけど。
by kienlen | 2013-08-08 10:27 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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