「天使の分け前」

昨夜、また娘と観に行った映画。なんといっても「麦の穂を揺らす風」が素晴らしくて、覚えやすい名前でもあり、ケン・ローチ監督と聞けば行きたい願望を持つようになり、遠くまで観に行ったのもある。しかし毎回素晴らしいと感じるわけではなく、今回もどういうものか全然分からず、でも、そんなに期待はせずに行った。観客は他にいないかもと思っていたが、カップルが数組いたから結構にぎやかに感じた。そういえばこの間、取引先のパーティーに出た時に映画の評論をしている人が「東京だったら混んでいて観にくいのもここならガラガラで恵まれている」と皮肉っていたが、確かに。タイトルとポスターの印象からすると娯楽ものっぽい。娘がネットでちょっと見て「感動モノ」に分類されているようなことを言っていた。舞台はスコットランドで、いかにも労働者階級の人達の犯罪名と裁判の様子がパチパチと速いテンポで紹介される。社会奉仕活動の処分になった彼らと、彼らを担当する、これは日本でいうところの保護司の役割をうんと拡大したようなものなんだろうか、との交流を中心にしばらくは進む。

主人公は暴力事件を何度も起こしている若者。イギリスのような階級社会で、この彼の恋人が金持ちの娘というのがちょっとよく分からなかったけど、クラブの経営者というから成金ってことか。それから、ロミオとジュリエットみたいに、親同士の争いが子どもにまで引き継がれるというのがひとつのポイントになっているけど、このあたりもイギリスではよくあることなのか、知らないので、この分からなさがちょっともどかしかった。終わった時に「何、これ」と娘と顔を見合わせてしまった。不思議な印象。でもこういう感じって、自分にとってはこの監督さんに結構共通しているなあ。コラージュ風というか、流麗な展開ではないというか。洗練と無骨のミックスというか。ウイスキーの薀蓄に25%くらいも取っているのがおかしかった。いかにも貧富の差の分かりやすい象徴。タイトルの意味はここから。どこが「感動モノ」なんだ。そういう分類を超えているという感じなんだけど。自分としては安易な分類が好きじゃあないので、ザマアミロ…というのは変だけど。絶望的な世の中に希望の種を見出したいという良心的願望を、現実社会の中に落とし込んで醸成させたメルヘンって感じ。すごく面白いとか感動、というのでもないが、好きか嫌いかというと、嫌いではない。なぜだろう。正義とか公平さへの問題意識が核になっているからかも。日本もこういう映画がリアリティをもつ社会になっていくんだろうか。
Commented by jun at 2013-07-18 08:41 x
いい映画の評論、とても参考になり有難いです。インドは行ったことないけど昔観た『インドへの道』は忘れられません。
我が家のネコ三匹は元気です。先週は熊野古道に行って来ました。
暑気払いにまたお邪魔します。
Commented by kienlen at 2013-07-18 20:40
junさん、ぜひお出かけ下さいな。色々借りているものがある、と言い続けて何年でしょう。近くに映画館があるのはありがたいなと思います。熊野古道、いいですね。旅がしたいと思うこの頃です。
by kienlen | 2013-07-16 08:47 | 映画類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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