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『小さな建築』

隈研吾著。私にとっては大変に面白かった。岩波新書というのはどっちかというとこのところあまりピンとこなくて、買おうという気にならないのだが、図書館で見つけたので借りた。買っても良かったな。買うかも。付箋をつけながら読んでいたら付箋だらけになってしまって、結局引用するのも面倒になるという、いつものパターン。実例豊富、建築物の構造的な解説も簡単に触れていて、建築史の流れも簡単に触れていて、へえって思う知識が頻出し、大変に盛りだくさんなのに、思想がピンと張られているせいもあり、大変に読みやすくて面白くて止められなかった。まるでミステリーを読むようなのは、受注した建築物をどう実現するかの過程がとってもスリリングで、妥協しなくて、クリエイティブってこういうことだよな、とワクワクさせてくれる。このところ我ながら元気がないが、この本を読んだ直後は元気が出たくらいだ。手元に置いておけば恒常的に元気がでるんじゃないかという錯覚くらいはさせてくれそう。

このところ面白い本に当たらない、というか、当たると困るので微妙に無意識に避けているのかも。本読んでいると仕事しなくなってしまうからだ。でも面白い本を読んで元気が出た方が仕事もやる気になるかも、しれない。はあ、何をバカ言っているのだ。こういう時間的な区別のなさが良くもあり悪くもあり。しかし建築というのはやはり面白いな。芸術の要素はあるにしても実用でもあるし、人間にとってなくてはならないものなのに、衣食住の中で、やはり衣食よりも難しくて大きな分野。日本文化を礼賛したい保守の方が読むにもいいのじゃないだろうか。細い柱何本もで支える構造とか、この協調性、ハーモニー、支え合いの精神、いいよな。職人の技に応用可能性を見出したり、ひじょうに柔軟なのだ、思考が。そして広がりがある。あ、柔軟だから広がりがあるという関係なのか。他の建築家の本をそんなに読んでないので知らないけど、隈さんみたいな考えの人に、このあたりのハコモノも頼んでくれないかなあ、そしたら楽しそう。とっても面白かったです。
by kienlen | 2013-06-17 16:11 | 読み物類 | Comments(0)

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