「白い巨塔」

夜は仕事にならない、あ、夜も、か。それで夜はなるべく夜に上映する映画に行こうと思った。昨夜は古い映画館でやっている名画特集へ。白い巨塔。小説を読んでなくて映画もドラマも見たことがないので初めて。なんとなくもうちょっと複雑な心理描写を勝手に想像していたのだがかなり単純な人物設定だった。つまり個々の人間を矛盾や多面性を含めて丁寧に描くのは目的ではなくて、組織とか権力に重点を置いたものということなんだろう。となると単純化した方が分かりやすいわけで、登場人物全員が自分の中での葛藤に苛まれることはないという、これってありかなと思うようなことになっていて、ちょっとびっくりだった。まあ、それは案外正直な人間観なのかもしれない。見事というか恐ろしいというか。

権力欲一点張りの主人公がだんだん狂人めいた顔になっていき、周囲がそれを支えることで自分の欲を満たそうとするのを見て、確かにこれはリアルなのかもと感じた。例えば政治家なんか見ていると、かなりこういう感じなんだろうなというのがとっても想像しやすい。政治に限らないか。あれをやるからこっちを譲歩せよという駆け引きばかりの世界。まだゲームも普及していない昭和41年の公開であるから、代替物としてのゲームではなくて目の前の展開がそのままゲームなのだ。今はここまで露骨に金をばら撒くわけにもいかないだろうから、もっと巧妙な手段を考えるのだろう。主人公は、出自がどうであっても社会的地位の上昇が望めるということになった時代の申し子でもあったんだろう。どっちかっていうと問題提起型みたいなのを勝手にイメージしていたが、娯楽映画っぽかった。それにしても主人公の暴走ぶりがちょっと今のあの人に似ていて、笑えないどころか実に恐ろしいよなと思いながら見た。
by kienlen | 2013-04-30 18:08 | 映画類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30