『違法弁護』

中嶋博行3冊目。どれも共通しているのは、功利主義者の乱舞っていうイメージかな。こういうのを面白いと感じるのはきっと世代的なこともあるのだろうか。弁護士も検察も公安も警察も、どこもかしこも功利主義者の塊で、正直というか、ここまでいきますか、みたいにも感じる。ひとりふたりウエットな人が登場して浮いた感じではあっても正義感があるみたいな人物が登場するという勝手な思い込みが自分にあったなと感じ入った。明るい気分にはならない。何というか、見たくないものを見せられた、みんなこれを無意識に避けることによって生活がかろうじて成り立っているのに、幻想を打ち砕いては身も蓋もないじゃありませんかと言いたいところだが、法律ってそうなのかも。見たくないところまで踏み込みのは哲学か宗教か法律…、それと色々あるか。しかし意味合いは違うようにも感じるな。

まあ、そんな気分ではあるが面白くて止められなかった。ひじょうにドラマ的でもあった。弁護士の増員問題と公安の解体問題と、ロシアの崩壊問題と、起きていることを関連付けていくとこういう物語が出来上がる。ううん、逆だろうか、まあ、要素的には色々そろい踏み。やはりいきなりどかっと驚く殺人場面があり、権力と地位と金がすべてみたいな人がたくさん出て、それに縛られることによって他が見えなくなって、しかしその価値は絶対なので破滅に向かいそうになるが、でも逃げずにその価値にしがみつける道具を、例えば法律とか既成の権力とか、そういうのを持っているものだから、それはある意味勝ったりもして、全体的にはドライな泥沼スパイラルみたいな展開。保守層が、昔ながらの道徳を叫びたくなったりするのも、こういう人をいっぱい見ているからなんだろうか。ちょっと分かりませんが。しかし道徳なんかクソくらえという発言はないものの、そういう空気はいっぱいで、現代社会の正しいモンスター像を示していただいているのかもしれない。
by kienlen | 2013-04-20 11:31 | 読み物類 | Comments(0)

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