『検察捜査』

この間の1冊で気に入ってしまった中嶋博行著の本を図書館で探したがなくて、検索すると閉架で何冊かあった。理由を聞いたら古いからということだった。これの発行は1994年。つい最近じゃないかと感じるのは年のせいである。そっか、息子が生まれた年ということは、なるほど、もう本棚から引き揚げるしかないだろう。ということは私は日本にいなかった。いたら読んでいただろうか、江戸川乱歩賞受賞作。これも、私の好み的には的中って感じだった。ミステリーが好きといっても私の場合は謎解きそのものへの興味というんじゃなくて、謎は展開の面白さの一部に過ぎないので、は、だったらミステリーである必要ないかということになるのだが、つまりそうなのだ。でも人の生死というのはギリギリの人間像が浮き彫りになることなので、それへの面白味かもしれない。で、法律というものには、多分感情はないのだろうから、そのふたつががちっとくるこういう司法物はどちらをも引き立てることになるのだろうけど、この著者は感情表現はあんまりしていない。それで臭覚を使わなくても読めるって感じで進んでいく。

スタートは検事不足という問題から。知らない、検事不足なんて。よってびっくり。何しろ90年代前半の日本の様子については、一般常識も何も多分知らない自分。もっとも知らなさにおいては、その頃に限ったことでもないか…。で、美人検事が、これがいかにも小説に感じないのは、検事は美人というイメージが自分にあるからか。で、この美人と事務官の間柄がなかなか良いのだ。で、惨殺されるのが弁護士会の大物で、それからの展開は、司法改革をめぐるあれこれに発展して、まさかここまでは、とは思うのだが、強大な権力を持つエリート組織の原理ってこうかもねえ、みたいな現実味は充分あり。それで、ついつい、大きく騒がれた検察庁の問題などを思い出し、結構予告的だよなと感じられる。そういう点ですごいなと思ったし、古さがちっとも感じられない。あるとすればパソコンじゃなくてワープロとフロッピーで、携帯電話が登場しないことくらいか。面白かった、ということでこの著者の3冊目に着手することになってしまった。
by kienlen | 2013-04-18 08:55 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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