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11.25 自決の日-三島由紀夫と若者たち

しばらく前に見た。劇場でやってくれるといいな、無理かな、と思っていたら若松孝二監督特集が組まれていて、その中に入っていた。上映期間は1週間。平日の午後3時からというのに行って、劇場スタッフに、入りはどーですか、と聞いたら結構いいですということだった。その日のその回は数人で広々。極小スクリーンではなくて良かった。三島由紀夫については、小説でしか知らない。若い頃に仮面の告白を読んで感動してしまって何冊か読んだけど、あの当時何を思ったのかは遠すぎる過去で覚えていない。ただただ美文に酔いしれたという感じかなあ。何も分かってない。で、当人を見たこともないのだが、内面の弱さを隠すだけの表面的な強さがあるというイメージを勝手に抱いていた。映画では自分のイメージよりも弱々しい感じが出ていたように思う。できれば裸体はもうちょっと、こっそり鍛えた形跡があるとイメージと重なるんだけど。

森田必勝はなんか、ぴったりな感じ。とてもシンプルなキャラクターとして描かれていた。脇を固める学生達もいい雰囲気で、若松監督は好きだなという気持ちが強まる。何がいいんだろうか。人間への愛情が感じられるところだろうか。それと、何か絶対的な存在抜きに関係性でここまで迫るというのがすごいなという気がする。カポーティーの冷血を思い出しながら見ていた。まあ、自分にはその程度の手持ちしかないということでもあるが。実に良かった、見て良かったと思いながらドアを開けたら、年配の男女の声がした。何かと思ったら受付のスタッフに向かって「三島は早すぎたのよ。今なら…」みたいな話を結構興奮気味に話していた。ううむ、そうも取れるか。しかしこの映画から私が感じたのは単純に生と死についてで、それがすべてだったな。ああ、残念だ、若松監督。こういう映画をもっと見たかった。千年の愉楽を楽しみにしている。
by kienlen | 2013-02-08 21:08 | 映画類 | Comments(0)

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