『人間における勝負の研究-さわやかに勝ちたい人へ』

昭和57年刊。米長邦雄著。前に読んだ羽生さんとの対談がとても面白く、つられて羽生さんの本は読んだが米長さんのがまだで、これを選んでみた。ネットなので様子見もなしのあてずっぽう注文。随分前に書かれているはずなのに、古さは全然感じなかった。男と女の役割については、どうしてここまで固定的なのか不思議なくらいだし、男だからこうである、というのは男だけなんだろうかと、これも不思議ではあるが、全体には面白かった。新鮮というよりは、やっぱりそうだよね、と感じるところが多々で安心感を得られる。今この時というのを長期的な展望の下に位置付けているということを強く感じさせる書き方が印象的。これは将棋という勝負の特徴を反映しているのだろうか。とりあえずやってみる、最善手でなくても取り返しがつくなら二番手でいいとか、大胆さと慎重さのバランスが納得できるもの。

それもそのはずで、本の紹介が「将棋界きっての才人である著者が勝負に不可欠の心得-『雑の精神』『省の精神』について説く」とある。なるほど、いい精神。前半は米長さんの生い立ちとか環境みたいなもので、面白くなるのは後半。特に5章の「強者は泥沼で戦う」と6章の「逆転のテクニック」は痛快。どうやって相手の足を引っ張るか、泥沼に引き込むか、それに乗じて行け、みたいな話が、まことにさわやかに語られる。純粋な勝負の世界なので、勝負でもないのに足を引っ張り合って本末転倒みたいなどっかの非さわやかな世界とはまことに違うのである。相手を陥れるのを目的にするなら米長さんに弟子入りすればいいのに、みたいな。ついでに文章もすっきりとさわやかで読みやすく嫌味がない。男の世界らしいけど、女が読んでも十分に楽しめる。
Commented by jun at 2012-10-18 12:34 x
今から30年程前、新宿のゴールデン街では米長さんはヒーローだったとか。二丁目で飲んでいた私はお会いしたことはなかったけど。さわやか流という人生相談の連載も面白かったな。むちゃくちゃだったけど快刀乱麻だった。いわゆる羽生マジックというのも魅力的ですね。
たまに日曜の将棋番組を見る、高校の将棋同好会だった私です。五手先まで読み、良い一手とは攻守に効く一手と知り、人生にも役立って・・・いないか。
プロは100手読むと言いますしね。
Commented by kienlen at 2012-10-19 08:30
人生に役立って…いるんじゃないですか。私は小学生の遊びレベルだったから人生に役立って…ないです。役立つどころか損した。若い頃の勤務先で賭け将棋をやらされ負けてましたから。ほとんど雀荘生活で出社すると将棋やってる社長はお元気だろうか。junさんの所、全然行けない。何これ。すみません。
by kienlen | 2012-10-15 20:49 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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