「ル・アーヴルの靴磨き」

見たくなるようなタイトルじゃないなあと思っていた。ただ、テーマが移民の話なのかと予告編で思い込んだため、だったら自分の関心事でもあるしな一応、と思って見に行くことにしていた。ネットの感想をのぞいてみると、不思議な映画、と書いている人がいて、全体的には確かに不思議な映画って感じだった。何でも監督の何とかさんという、とても覚えられない名前の方がそういうのを作るらしい、といっても自分は知らないから何とも分からない。会ったことのある人の名前も顔も覚えられない上に、映画じゃさらに覚えられるわけない。ということで移民の話なのかということだけど、別にそれをテーマにしているとは感じられなかった。自分にとって不思議だと感じるのは、リアリティがあるようで全くないような、というあたりなんだろうか。ひとつひとつはとっても現実的。フランス人ってあんなにワイン飲むんですかと思って、つい私も飲んでしまった、日本産だったけど。いかにも映画的な美男美女が出るわけじゃないところがリアルで、いかにも映画って感じさせないけど、かといってファンタジーっぽくもある。

好みからいうと大好き。とても良かった。幸福な気分になれる。ということは映画らしい映画ってことになるのかなあ。そもそも誰のバックグラウンドもよく分からないというのがファンタジーっぽい。謎めいているということはなくて、謎かけ的な思わせぶりでないのが良かった。謎は謎でいいから、まあ、みんないいのだが。で、実際、人との関係ってこうだよなと思う。家族だってお互いが知っていることなんてそんなに多くないと思うし、そういう関係性が自分には違和感ないというか心地よいというか、だったように感じる。それと、これは時代設定はいつなのかがもう分からなかった。あんなボロボロのタクシーが走っているのか、フランスに行ったことがないから分からない。携帯もな時代かと思うと、警官は使っている。でも他の登場人物は使ってない。でも固定電話がないから、それって携帯が普及している時代だからなのか、そういうのも不思議さの一因だったな。刑事がカッコ良かったのが映画的か、でも、そういえばありそうな事ばかりだけど、実は人々の気持ちの中で、あって欲しいと願うことの連続で出来上がっているのかもしれない。そうだな、そういう感じ。あの子、助かって欲しい、いつの間にか治っていて欲しい、敏腕刑事だって人情家であって欲しい。矛盾すると思われることが同時に起きるということだな、で、これは現実もそうでありそうだし、意外に心の持ちようかもしれないし。いやいや、大変によろしい映画で感動しました。子ども騙しっぽいところがない。高齢社会用の映画。老人ホームとかで上映したら受けるじゃないかな。私なら嬉しい。外に出たくなるかも。
by kienlen | 2012-09-25 08:41 | 映画類 | Comments(0)

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