『アジア現代文学⑪ 蛇』

この間読んだタイの小説が素晴らしくて、またタイ文学を読みたくなって注文してあったもの。これは確か昔読んだことがあると思うが本は手元になかったし、内容を覚えているわけでもない。原作は1984年の発表というから、日本ではいけいけどんどん経済の頃か。タイでもその兆候の現れている頃かな。私がタイに行く数年前でもある。翻訳本の発行は1992年。私がまだバンコクにいた時だなあ。著者については「待望久しいタイ農村文学の俊鋭」とある。確かに内容はその通りな農村の社会と人々を描いたもの。お寺、僧侶への批判、権力者の多分象徴的な意味としてだろう、ここでは村長への批判も強烈。著者が批判するそれらへの盲従者が村人、すなわちこっちも強烈に批判、という構図。もちろんその中に冷静に本質を見抜く目を備えた人もいるのだが、こういう人は定石通りというか、当然のことながら主流を行くことはできず、刑務所に入ったり、蛇取りなんかをしながら糊口をしのいでいるわけだ。最後に善が勝ったりなんてことは、もちろんありません、というところがひじょうにリアル。

こういう小説も、タイに興味のない人が読んで面白いわけはないと思うけど、タイに興味のある人、行ったことのある人、タイ人のあれはどういうことなんだろう等々、タイが身近な人には面白いのじゃないだろうか。少なくとも、私はひじょうに興味深かったし、とても納得しやすい話だった。まあ、それを良しと思っているのとは違うけど。こういうことが夫の出身の農村で起きても不思議はないなというリアリティを感じるし、片っぱしから、こういう人いそうだなという人だし、懐古主義的な人なら奨励したくなるような親子関係が何をもたらすかという点でも、さもありなんという展開になっていて、その逃げ道なしな感じに農村の閉塞感がぷんぷん。これはずっと昔の物語なんだろうか、それとも今も根底に流れているんだろうか。表面的には変わっている、でも根底から変わるということはそんなにないと思われるので、タイ社会の基本原理というような点で分かりやすく面白いと思った。原文知らないけど、例えば客をもてなすのに「熱いお茶を出す」という場面があり、これはきっと水なんだろうけど、日本人に違和感ないように熱いお茶にしたのか、それともこの地方では熱いお茶もありなのか、などと考えた。蛇好きには蛇の描写だけでも興味深いかも。蛇嫌いにとっては息が詰まりそうかも。
Commented by 雹子 at 2012-09-23 00:22 x
へビの好きな私にもぜひ、と誘っているような記述で、一度は読んでみたいという気持ちになりました
Commented by kienlen at 2012-09-23 21:02
読んだら感想聞かせて下さい。
by kienlen | 2012-09-22 13:27 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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